湯上り-2
・・・・
宿の浴衣を着て 脱衣所を出て廊下も見まわした
が そこに 翔の姿も 彩香の姿もなかった
彩香と 待ち合わせの場所を決めたわけじゃないし
時間を決めたわけでもない
少し賑やかな声がするロビーに向かって ゆっくり歩きだしていた
手持無沙汰な感じで持ってみたスマホ
画面を開いてみたが メール等はない
そうだよな 彩香が 先に 翔と二人きりになってるはずないよな
そう信じるような 願うような気持でロビーに入ると
すぐ目に留まるソファーに 彩香の姿があった
さっきまでの借りていた浴衣姿ではなく
俺と同じ 宿の浴衣だった
「お待たせ」
「ん？私も 今来たところだよ」
彩香の肌が ほんのり赤みを増している気がした
さっきまでの お酒の赤さとは違う・・・
「翔は 先に部屋に帰ってるはずだよ 飲み物は買ってくれるってさ」
「大きな会社に勤めてると 気前いいわね」
彩香は ゆっくりと立ち上がり
畳んだ浴衣やタオルを胸元に抱えた
「・・・・・じゃあ 部屋に 戻ろうか・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
俺と彩香は 二人で並んで 部屋の方へ向かう廊下に歩き出した
少し賑やかな声がする廊下・・・・
蛍光灯が通路を照らし 窓の外はもう 真っ暗で
歩いている俺たちの姿を写していた