フレデリーケ-2
「まこと、あたし、おきて います。あなた、あたし、だきます。いい?」
滞在期間が残り三ヶ月となった帰る年の四月、ベッドの上のフレデリーケが言った。なんのことかと思っていたら、日本語のあとエスペラントで
「Ni devas kompletigi laboron.」
おしまいまでするべきだと言う。分かりかねている僕の様子に
「Mi estis ĉion sciinta ekde la komenco, kion vi faris al mi, Makoto.」
そういうことか。そうだったのだ。フレデリーケは、初めの日から、僕がしたことを知っていた。僕は青ざめた。
けれどよく考えて聞き返した。そういう時、この子が眠っていたのは間違いなかったからだ。
「Sed vi ĉiam dormis.」
「Tio tute ne rilatas al mia konscio. 」
驚いたことに、フレデリーケは眠っていても、逐一周りの出来事が分かるのだと言う。真面目な目付きから、それが嘘には思えなかった。
怖くなかったのかと聞く僕に
「Ne. Ĉar la afero estis la volo de Tigrenjo.」
これがティグレーニョの意志だったからと微笑んだ。でもこのままじゃ許さないと加えた。
きょうだい共に変わっている。冗談なのか、本気なのか、その加減が僕には分からなかった。許さないという言葉には、僕の罪を自覚させる響きがあった。それを気取ったのか
「Ĉu vi timas? だいじょうぶです。Estas simple. かんたん。」
フレデリーケは裸になった。八年生なのに胸はなく、毛も生えていない。漂ってくる体のにおいは、それでも確かに女の子だった。立ち上がり、後ろを向いて両手で広げると、座っている僕の鼻に触れるほど近づけた。十四歳の女の新鮮な汚れが、僕を酔わせた。真ん中で、見えなかった女の子の小さな穴がぷつりと開いて濡れた。下腹が熱くなった。
その瞬間を捉えたフレデリーケは、振り向いて僕のズボンに両方の手を入れた。触ると、あっと言ってすぐ手を引っ込めた。フレデリーケが僕のを見たことはなかった筈だ。
僕は自分で取り出して見せた。それを食い入るように見つめながら、フレデリーケは、恐る恐る指先で造りを調べた。固く握ってみて
「Mi nepre bezonas ĝin. Mi donu al vi la mian, kaj vi al mi la vian.」
フレデリーケは、帰国までに、三百六十回の射精をするよう、僕に約束させた。それがティグレーニョの意志だと、また言った。確信に満ちた言い方だったが、事を分かって言っているふうではなかった。なんだか本当に猫から伝えられた話であるように、僕にも思われてきた。
合わないネジを押し込まれていくフレデリーケは、歯をくいしばり、シーツを掴んで耐えていた。どう見ても強姦の現場だった。
ティグレーニョ本人は、相変わらず隣に寝転がっていた。僕たちが何をしようが、一切知らぬ顔を決め込んで、尻尾の辺りを舐めていた。