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菩薩恒作衆生利( ぼさつこうさくしゅうせいり )
【ロリ 官能小説】

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ファンニ-5

翌日からやけに大人しくなったファンニを、皆は不思議に思っていたが、練習の際の激しさは変わらなかったから、一時的なその日の気分なのだと考えていたようだ。
今度は僕がファンニを連れてきた。お婆さんとフレデリーケは、大層歓迎してくれた。食事に酒が出なかったのは、僕が予めファンニのことをお婆さんに話しておいたからだった。
「そうかね。話してくれてありがとうよ。かわいそうな子だねえ。あした、連れておいで。」
要するに、連れてきたのもお婆さんのアイデアからだった。
お婆さんはしかし殆ど話すことがなかった。言わば、いつも通りだった。ファンニのほうも、本当に大人しかった。僕とフレデリーケが一番喋っていた。
お婆さんは、食事が済むと紅茶を淹れてくれたが、紅茶を前にしたファンニの目から涙がこぼれ落ちてきた。ふと見ると、お婆さんも泣いていた。
僕とフレデリーケは、任せて部屋に退散することにした。
「あのお姉ちゃん、どうしたの?」
「辛いことがあるんだ。」
戸の向こうから、大きな泣き声が聞こえてきた。二人で泣いているらしい。そのうち、二人が怒鳴り声のような言葉で騒ぎ出した。心配になって覗こうとしたら、フレデリーケが
「あれ、お婆ちゃんのお祈りだから、大丈夫。」
「お祈り?」
「うん。久しぶりに聞いた。聖神を頼むお祈り。」
「おっかないな。」
わんわん泣き喚いて何か叫んでいる。僕はフレデリーケを抱きしめ、布団に横たわった。ティグレーニョがすぐ横に来た。
物が倒れた大きな音がした。今度は声じゃない。僕が行ってみると、ファンニが椅子ごと倒れて、わんわん泣いていた。神様ありがとうございますを連呼していた。お婆さんは、ファンニの頭に手を置いている。
ゆっくりと起きたファンニは、しばらくお婆さんの胸に抱かれてから、信じがたい晴れやかな顔をして帰っていった。
僕は将来のことに悩んできた。しかし、ファンニのように、過去に悩んで進めない人もいるのだ。僕の今は飛び込んで出来たようなものだ。作ったんじゃないと思う。過去を作り変えられないなら、やはり人じゃない力に飛び込んできてもらうしかないのかも知れない。
ファンニは翌日から姿を消した。


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