過去との決別-4
奈々子は黙って葵の話を聞いて、今度は彼女が俯いてしまった。
自分が想像していたよりも葵のこれまでの人生は決して明るいものではなかった。
彼が大人びて見えるのは、そうせざるを得なかったから。
彼は子どもらしい生活を送ってこれなかったんだ。
ずっしりと彼の言葉が奈々子にのしかかる。
こんな私が彼をこれからも支えていくことができるの・・・?
でも、この話を聞いたからって葵の事が嫌いになれるわけなんてない。
・・・私が彼を守ってあげたい。
奈々子はそう思った。
葵は不安そうに奈々子を覗きこむと彼女は泣いていた。
そのうちうっうっ・・・と嗚咽の音が聞こえてきた。
「ごめん、奈々子さん。俺が汚い男だって思わなかったでしょ・・・?」
葵がそう言うと、奈々子は繋いでいた手を振りほどいて葵に勢いよく抱き付いた。
「そんなことないよ!!!葵 君は汚くなん か ない!!
・・・今 まで ずっと 一人で抱え込ん で生き てきた の・・?」
途切れ途切れになりながらも、奈々子は言う。
「・・・誰にも言えないよ、こんなこと・・・。豹介にも昨日初めて打ち明けた。」
奈々子は葵を抱きしめながら頭を撫でる。
「―――奈々子さん・・・こんな俺でもこれからも傍にいてくれる?」
「もちろんじゃない!私も葵君の傍にいたい。ずっといたい!!!」
奈々子は迷いなく葵に言った。