元、家庭教師-4
駅近くにここ最近に建てられた30階建ての高層マンション。
全てオートロックでコンシェルジュまでいる。
まるで芸能人が住む様な造りに、奈々子はただただ驚いた。
「わー・・・すっごい。」
葵の家は18階だった。
リビングの大きさから、部屋の数、窓からの景色、何から何まで奈々子を圧倒させた。
しかし葵は、「俺が買ったわけじゃない。」とボソッと呟いて
キッチンへと行ってしまった。
奈々子は我に返る。
葵は家族とここに住むことなく、一人でこんな広い家に住んでいるんだ。
お父さんが帰って来たって、たぶんあんまり話したくはないだろうから、
この家で会話もしていないんだろうな・・・。そう思うと胸が詰まりそうになる。
するとマグカップを持ってきた葵がキッチンからやって来た。
「コーヒーでいい?」
「うん、ありがとう。」
奈々子はカップを受け取って、彼に促されて大きな立派なソファーに腰かけた。
リビングはテレビとソファー、必要最低限の物しか置いていないようだった。
奈々子が考えていることを葵は察知したようで、彼は少し寂しそうに言った。
「男二人だからね、生活感ないでしょ?」
奈々子は何も言えず、少し微笑んで葵を見つめた。