9.サイド・ストーリー『海山和代の初体験』-4
ケンジは横たわった海山和代の身体にゆっくりと覆い被さり、そっとキスをした。
「そこは鼻です」
「ご、ごめん」
ケンジは全く気が進まなかったが、海山和代の身体を抱き、その唇を自分の唇で塞いで吸い始めると、身体が勝手にその行為に没頭し始めた。
んんっ、と小さく呻いて、海山和代はそのキスに応えた。ケンジはそれが愛するミカの唇だと自分に言い聞かせ続けていた。
それからケンジはセラピーの時のセオリー通りに、まず手のひらを相手の胸にあてがい、ゆっくりとその乳房をさすった。乳房を……。
「どこだ?」
ケンジはアイマスクをしたまま、身体を起こして、海山和代の身体の横に正座をし、しきりにその胸を撫で回した。
「この辺かな?」
ケンジの手は海山和代の腹を撫でていた。
「もう!」
海山和代は大声で叫んでケンジのアイマスクをむしり取った。
「あたしの身体は福笑いですかっ!」
「す、すまん……」
ケンジは頭を掻いた。
よく見ると、胸にはちゃんと二つの乳首があった。紫色のレーズンのような粒が白い肌に張り付いている。「ここだったか」
「どーせ貧乳ですよ」
海山和代はふてくされたように言った。
「想像以上だな。俺、まるでケネスを抱いてるように錯覚してたよ」
「ぶーっ!」
それでもケンジがその巧みな舌使いで二つの乳首を愛撫すると、海山和代の身体の中に今までに感じたことのない快感が渦巻き始めた。
「ああ、ケンジさん、いい、気持ちいい、素敵っ。今までこんな感じになったこと初めてです。すごい。ああ、これがセックスなんですね」
ケンジは硬く隆起した乳首から口を離して言った。「少し静かにしてくれないかな」
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