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アダルトビデオの向こう側
【熟女/人妻 官能小説】

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9.サイド・ストーリー『海山和代の初体験』-2

「いません」
 海山和代が口をもぐもぐさせながら即答した。そして皿の上のガトーショコラの最後の一切れをフォークで刺した。
「今までつき合った男とかいなかったのか?」
 ミカはテーブルにほおづえを突いて少し呆れたように訊いた。
「ことごとく玉砕でしたね。ケンジさんを含めて」
 ミカの横に座ったケンジが口をゆがめて小さくため息をついた。
「何がいけないんでしょうか?」
 海山和代は空になった小皿を横にどけて、すがるような目をミカに向けた。
「何がいけないんだと思う?」
 ミカはそのまま海山和代に言葉を投げ返した。
「あたしが貧乳だからでしょうかねー」
「違うと思う」ケンジがぼそりと言った。
「とにかく」ミカがコーヒーのカップを持ち上げて言った。「おまえも男を知る必要があると思うわけだ。あたしたちとセラピーの仕事を続ける以上はな」
 海山和代は拗ねたように口をとがらせた。
「でも、あたしとエッチしてくれる男の人なんていませんよ……」

 ケンジは額と鼻に脂汗をかいて息を凝らしていた。

 ミカはいたずらっぽく訊いた。
「誰に奪って欲しい? おまえの処女」
「ケンジさんですっ!」海山和代は立ち上がり、ハイハイと叫びながら左手を高く挙げてすぐに大声で答えた。「ケンジさんがいいです。ケンジさんが」
「わかったわかった、落ち着け海山和代」
「あたしが心に決めた人ですから、ケンジさん」
「勝手に心に決めるな」
 ケンジが言った。
「いいんですか? ほんとにあたしを抱いてくれるんですか? ケンジさん、嬉しいです。やっと夢が叶います。やった、やったー!」
「まだ抱いてやるとは言ってない!」
 ケンジはあからさまに不機嫌な表情で叫んだ。
「フラワールームでお願いします! あたし、あの部屋でセラピーしてる時、自分がケンジさんに奪われるのを想像してうっとりしてました」
 海山和代は胸の前で指を組み、夢見心地で言った。
「おまえ仕事中にそんなこと考えてたのか」ミカが言った。
 海山和代は椅子に座り直し、頬を赤くして、甘える子犬のように上目遣いでケンジを見ながら小さな声で言った。
「いいんですか? ケンジさん……」
 ケンジは思わず目をそらして抑揚のない口調で答えた。
「し、しかたないだろ。これも仕事のためだ」




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