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アダルトビデオの向こう側
【熟女/人妻 官能小説】

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7.帰宅-6

 テーブルに戻ってきたケネスが両手を挙げて大声で言った。
「皆さん、嬉しいお知らせがあります」
 一同は手を止めて一様にケネスを見た。
 ケネスはそこにいる参加者を見回しながら言った。
「姫野拓也くんがすずかけマイスターに認定されました」
 わあ、という歓声とともに一斉に拍手が巻き起こった。
「やったね、拓也兄ちゃん!」
 将太はそう言って香代の目の前で拓也の手を取り、大きく振って握手をした。
「しかもいきなりゴールドランクやで。たいしたもんやな」
 ケネスは上機嫌で椅子に座り直し、ワイングラスを手に取った。
「いやあ、めでたいね、姫野君」ケンジも言ってグラスを目の高さに持ち上げた。「乾杯」
「ケニーさんが推薦して下さったお陰です。ほんとにありがとうございます」
 拓也は立ち上がってケネスに向かって最敬礼をした。
 香代が目を潤ませて言った。
「今日は私たちにとって最高の日です。皆さん、ありがとうございます」

 拓也が申し訳なさそうにケネスに目を向けた。
「でも、その、AV界に足を突っ込んでる僕がこんな名誉を頂いてもいいんでしょうか……」
「そないなこと関係あれへん。純粋に君のカメラの腕が評価されたっちゅうことやんか。商工会も市もそないに度量小そうないで」
 ケネスは自慢げに笑った。
「将太、」建蔵が孫に目を向けた。「おまえも気張って働いて、ゆくゆくはこうして世間に認められるような職人になるんだぞ」
 将太は苦笑いをした。「拓也兄ちゃんのせいで宿題が増えたね」
 建蔵は上機嫌でグラスの焼酎のお湯割りをごくごくと半分程飲むと、隣に座った彩友美に目を向け直した。
「彩友美さん、お腹の赤ん坊は順調に育っとるのか?」
「はい、お陰さまで、お爺様」
「大事にしてやらにゃいかんぞ、将太」
「わかってるって」
「おまえも父親になるんじゃな」
「じいちゃんはひいじいちゃんだね」
 将太は楽しそうに言った。
「ってことは、」ケンジが言った。「香代さんはおばあちゃんで、拓也君はおじいちゃんになるわけだな」
「僕、三十二でおじいちゃん呼ばわりされるんですかー」拓也は困った顔をした。
「生まれてくる子に何て説明しましょうか……」
 彩友美は悩ましい顔をした。隣の将太はそんな妻のお腹を優しくさすった。
「予定日はいつ?」ミカが訊いた。
「十二月の初めです」
「元気な赤ん坊産んでな」ケネスが言った。「和代、頼んだで」
「わかってますって」
 海山和代は不必要にふんぞり返った。

「そうだ、あたし提案がありますっ」
 海山和代は身を乗り出し、ハイハイと叫びながら左手を高く上げた。
「なんだよ、提案って」隣のミカは遠慮なく眉間に皺を寄せた。
「拓也君と香代さんも子供を作って欲しい」
「はあ?」
 ケンジが怪訝な顔を海山和代に向けた。
 香代が困ったように言った。
「で、でも私もうこんな歳だし、高齢出産になっちゃいますよ、和代先生」
 海山和代は楽しそうに言った。
「大丈夫。あたし以前香代さんを診察した時、その身体の若々しさに驚きましたもん」
「ほんまに?」
 ケネスが訊いた。
 海山和代は大きくうなずいた。
「まだまだ大丈夫。あたしが責任持って赤ちゃん取り上げるから産んで、香代さん」
「何だよ、その軽いノリ。他人事だと思って……」
 ケンジが呆れたように言った。
「それに、」海山和代は過剰にはしゃいだ。「もし生まれたら、将太君の子供より年下になるってことでしょ? 香代さんにとっては自分の子供が孫より年下ってことになって、話題になるじゃないですか。面白そう!」
 すぐにケンジが言った。
「面白がるなっ!まったく、いいかげんにしろ」
「ええ話じゃな。わしにとっちゃあ、孫もひ孫も変わらん。子供は多い方が賑やかだからな。わははは」
「おお、おやっさんも前向きやで」ケネスも楽しそうに言った。
 将太が恥ずかしげに言った。
「じいちゃん、ちょっと飲み過ぎだよ」
「あなたのおじいちゃん、家族が増えてすごく嬉しいのよ、将ちゃん」
 マユミがにこにこ笑いながら言った。


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