第6話 母と息子-2
今度は、大きな通る様な声と言うよりも、ほぼ怒りも入り混じっていた。
それくらいに、息子の行動は私の鼻に付いていた。
ガサツな面は、私の主人でもある父親にも似てるような気がした。
私が、最も敬遠してる部分でもあり、それが息子にも遺伝してるのかと思うと、なぜか主人の顔を思い出しては怒りが込み上げていた。
そのまま息子の部屋に向かったが、途中の階段を昇る頃には、前日に夫婦生活を拒否された所まで、怒りの矛先が変わっていた。
やはりその原因は、彼の性と向き合ってしまった事。
彼の行為が無ければ、私もイラつくほどに欲求は募る事は無かった。
むしろ、ほとんど求めて来るのは主人であって、私はそれでも満足していた。
足りない時は、隙を見ては自分でも満たしていたからだ。
ただこの日は、朝方に彼の性と向き合ってる内に、思いがけず満たされてしまった。
禁断の扉を開いた少年の性。
その彼と同じ歳の息子の部屋にこれから入るのだが、なぜか徐々にと高鳴る胸の動悸。
扉を開いて足を踏み入れた瞬間に、私は浮足立ってソワソワする気分になった。
息子の着替えを取る為に、タンスの方へと向かったが、益々激しくなる動悸。
普段から洗濯物を取り込むと、息子の着替えをタンスに仕舞うのだが、この時はまるで違っていた。
そして、タンスの引き出しの取っ手を掴み開けると、下着類が目に映っては、なぜか押し寄せる罪悪感。
見慣れた息子の下着のはずなのに、初めて覚えた感覚でもあった。
まるで、見知らぬ異性の下着でも、覗き見しているかの様に・・・・・・。
彼の事を男として意識した時から、同じ歳の息子に対する私の見方に、変化を及ぼしていたのかもしれない。
つまり、息子の事を彼に置き換えて見る様になっていたのだ。
ならば、目の前の下着は、彼が身に着けてるような物にも似ているのだろう。
彼の性器を包み隠す、下着にも似た・・・・・・。
思わず蘇る、あの足裏に残る彼の巨根の感触。
私は、一枚のグレーのボクサーパンツを取り出すと、彼の履いてる姿を想像した。
きっと、貼りつくように膨れ上がるはずの、彼のボクサーパンツ。
その巨根の膨らみを再現しようと、私は指先でボクサーパンツの裏側から突いた。
もう・・・歯止めが利かなくなった、私の欲求。
この年頃になってからは、何度満たされても、再び蘇る様になっていた。
ジュンっと伝わる、一筋流れ出る欲求の証。
私はその瞬間にハッとなり、慌てる様に我へと返った。
もう、替えのストッキングは無い。
このまま続けたなら、残りの時間を居心地の悪いまま過ごす事にもなる。
私は、溢れ出る欲求を振り払う様にすぐさま、息子の着替えの準備に取り掛かった。
取り出したグレーのボクサーパンツはそのままに、適当なTシャツにハーフパンツも取り出してそれを一緒に重ねた。
そのまま急いで部屋を出ようとしたが、不意にタンスのクズかごに目が行っていた。
中には、取り分け目立つスナック菓子の空袋が捨ててあったが、その隙に微かに見える白い塊。
落ち着きを取り戻したばかりだが、なぜか再び胸の動悸は激しくなる。
その白い塊は、前日に彼から行為を受けた事を考えれば、安易にも想像できた。
息子も彼と同じ年頃・・・・・。
普段は何気なしに、クズかごの中身はごみ袋に入れていたが、思わずこの時だけは、白い塊だけを指先でつまみ出していた。
咄嗟に出た行動だが、今度の罪悪感は真に迫るもの。
母親が、無断で息子の性に立ち入ろうとしているのだ。
やはり取り出してみれば、何層にも重ねられて丸み込められた、ティッシュペーパーの塊。
私はそれを、おそるおそる自分の鼻先へと、ゆっくりと近づけて行った。
すると、思った通りの、独特の匂いが鼻を突く。
夫婦生活でも、数々と味わってきた匂いでもあった。
初めて痛感する、性に対する息子の意識。
彼の事を思えば当たり前だが、実際に目の当たりにするとショックは隠しきれない。
ティッシュペーパーをつまむ私の手は震えたが、すぐに断ち切ろうと元のクズかごに戻した。
気づけば、5分は過ぎていただろう。
いつまでも立ち入るには、何かしら怪しまれる時間。
私は息子に早く着替えを持って行こうと、急いで部屋を後にした。
それでも、浴室に戻る間に止む事の無い動悸。
彼を思うあまりに、息子の性にまで立ち入った代償は大きかった。
明らかに満たされた、性的痕跡。
考えれば考えるほどに、大きくなる動揺。
彼の性的意識が私のストッキングであれば、息子は何にあるのだろう?。
前日に、私は彼のはけ口にされようとしたが、息子が対するものとは?。
もしや、彼以上にセックスに対する概念を捉えた、行為だったのかもしれない。
男女が裸で抱き締め合い、繋がる悦びを抱きながら及んだ可能性もある。
いずれは、息子にも訪れる性の扉を開く時。
それを目の当たりにした事は、想像以上に衝撃が大きかった。
彼に行為を受けなければ、ここまで早く、息子の性にまで立ち入るなど思いつく事も無い。
彼の性と向き合ってからは、私の回りの日常は益々と狂い始めていた。