梅の木-2
ちづるは洗濯機をまわし、
洋服に着替えると
朝ごはんの用意をする。
タクミは、ソファーで
コーヒーを飲んだ後に
1度隣の自分の家に戻り
制服に着替え、戻ってくる。
ソファーに座りテレビを観る。
ちづるもすぐ横で、
洗濯物を干しながら朝のニュースと
天気予報に耳を傾ける。
ちづるが言う。
「ぁ、お母さんは?
もう居ないの?」
「ん? うん。
男の所に、、 いつだっけ。
昨日の朝?
戻ったみたい。
ラインだけ入ってた。」
「そっか。」
「仲良く過ごしてほしいわ。
迷惑だから。
、ぁ。
タオルも買ったの?」
「 ぇ?」
「それ。」
タクミは、
干してある洗濯物から
星の王子さまの絵が描いてある
小さなハンドタオルを見てそう言った。
ちづるもタオルを見る。
「ん、、 まぁ、 、、。」
「 ? 自分で買ったの?」
「、、、。 んーんー、、 」
「じゃあ、どうしたの?」
「、、んーと、。
、、、買ってくれた。」
「え? 誰が? 」
「、 、、。」
「、、、もしかして、 」
「、、ぁ でも
私だけじゃ、ないよ!?
あの、ほら、、写真に写ってた
女の人いたでしょ?
その人が、タオル見て悩んでて、、」
「、 、 、 、、。」
「この背景が、ね?
ピンクのやつがいいか
黄色のがいいか悩んでて、、。
私はピンクがかわいいって、
話してたのね?
そしたら、
吉川さんが
後ろにいて、、
聞いてたみたいで 」
「、 、 、 、、。」
「私には、ピンク。
その人には黄色を、、 」
「、、っ はーー。
いいよ、もう。」
「 え?」
「、、別に。
怒ってないから。」
「ん、 うん。」
「、 、、、。」
怒ってない、とタクミは言ったが
ちづるから見て明らかに不機嫌だ。
気まずい雰囲気のまま、
ちづるは洗濯物をベランダに出し、
朝食の準備を整えた。
テーブルに食パンやサラダなどが
並ぶ。
2人はいただきます、と小さく言う。
朝のニュースの音だけが、
気まずい雰囲気の部屋に流れる。
じっとちづるを見つめながら
食べ物を口に運ぶ。
ちづるは食べながらうつむいているが、
タクミからの痛いほどの視線を
額に感じる。
耐え切れなくなり、
タクミを見て言う。
「、、 なぁに?」
「、 、 、、、。」
タクミは口に残っていたパンを
コーヒーで流し込むと言う。
「俺、さぁ、 、」
「 ん?」
「浮気する。3年後に。」
「、 、へ?」
「どーする?」
「、 、、、」
は ?
ぇーーーと、
何? 急に
え ?
「ぇーーと、なんで?」
「そういうものだから。」
「 へ?」
「女が年上で男が年下だと、
数年後に男が浮気をするのが
一般的らしいのでーー。」
「、 、 、 、 。」
「、、どーする?」
「、、タクミ君、 」
「何?」
「、、、。コーヒーで、
酔っ払ったの?」
「、 、 、、。」
「、、普通、あの、、
それが一般的だとしても、
するって宣言はしないんじゃ、、」
冗談 ? とか??
吉川さんに ムカついて?
全然
分かんない
「俺は宣言する。
で、ちづちゃん、どーする?」
「 ?
どーするって?」
「それでも付き合う?
それとも、別れる?」
「、 、 、 、
急に、、聞かれても 」
「、、、 。」
「でも、、 〜っ 」
「何?
笑ってるの?」
「んーー?
3年後も、一緒にいてくれるなら
嬉しいな、って思って、」
「ほら! そこだよ、、。」
「 ?」
「軽く見てるよね。
俺の事。」
「、!? 見てないよ。」
「見てるよ。」
「見てないってば。
だって、、3年後なんて、
分からないよ。普通、、」
「、、、っはーー。
いつ、有利になれんだよ。」
「え? ユリ?? ?」
「、 、、、。」
3年後かよ
それとも 5年後か?
いつだ
「 ? タクミくん?」
「、 、、、。」
俺に 落ちてるのに
エロい事にも
きっともう 依存してる
俺じゃないと
駄目なくせに
なのに なんで
朝になると 全部
2人の時間はなかった事
みたいに
なっちゃうんだよ
「、、タクミ君?
吉川さんとは、、
私、本当に」
「、、、今日は?
一緒に働くの?」
「 え? うん、、。」
「お礼は?」
「ぇ?」
「飲み物とタオルのお礼。
考えてるんでしょ?
何にするの?」
「ぇ? 、、うん。
お茶に、しようかと、、。」
「、、、 お茶?」
「ん? うん。
吉川さんがいつも飲んでる
ペットボトルのやつ。
それを買おうと思って、、。」
タクミは少し、ホッとする。
しかし
その気持ちを素直に出す気分には、
まだなれない。
「うん、。いーんじゃない?」
「 ? ? 」
「、、、。
まぁ、、うん。
料理じゃなくて、良かったよ。」