秋の始めの夜のおはなし-4
その日からだ。風が強く吹く夜、
「こんな夜、あの誰もいない真っ暗な森の中で、かざぐるまは回ってるんだろうか」と思ってから、かざぐるまの回る音が耳に響くようになった。
今夜は一段とひどい。僕は毛布を持って、ママのベッドがある部屋に入っていった。
部屋の小さなソファーに寝そべって、毛布をかぶろうとすると、
「これこれ、どうしたのじゃ。」
ママはなぜか時代小説調の口ぶりで言った。
「うん、風の音がうるさいから、こっちで寝かせてもらおうと思って。」
「だったら拙者(?)の横に来なされ。」
「え…… いいの?」
「かまわん。拙者はそなたの事をマザコンなどとは言わんし、父上が夜中に帰って来られたところで、そなたが寝取ったなどとは思わんじゃろう。」
「ママ、何を言ってるのかよくわからないよ……」
と言いながらも、僕はママの横に入りこんでいた。
ママの横で僕は、あの森の奥を思い浮かべていた。
こんな荒れた夜に、あの子たちがあの場所でさびしい思いをしてるわけないじゃないか。
きっと女神さまに守られて、安心できる所にいるに違いないんだ。
そして僕は今、ママに守られてる。
ママの豪快な寝息は、耳の中に響くかざぐるまの音どころか、夜の荒れた風の音まで遮って、僕を眠りに導いてくれた。
(おしまい)