秋の始めの夜のおはなし-3
「これは、せつない母心よね。お店で
おいしそうなお菓子見つけたら、
『あの子』にも食べさせたい、と
ここに持って来てしまうのね。
お腹の中にいた『あの子』は、姿にならなくても
殻は形になってお腹に残り続けてるって言うから。」
ママは後ろから腕で、僕の首を軽く絞めた。
「あなたも見てるでしょう? 中出しとか種付けとか、妊娠を面白がったセックス漫画があるけど、現実は女に、こんなせつない思いをさせたりする事でもあるんだからね。」
その時だった。僕たちが入ってきた所あたりから、かざぐるまが回りはじめた。
カラカラカラ…… カラカラカラ……
回るかざぐるまは、次第に僕たちの立っている方に迫ってきて、女神さまの足もとのかざぐるまが一斉に回り出した。赤と青のかざぐるまは紫に、青と黄色のかざぐるまは緑色になって見えるほどの勢いで回り出した。
カラカラカラカラ… カラカラカラカラ…
だけど、僕の顔にはかざぐるまをそれだけ回せる風を感じていない。僕がじっと回るかざぐるまを見ていると、ママが言った。
「ふふっ『お兄ちゃん』が来てくれたから、みんな喜んでるのね。」