3.朋美の契約-2
「こ、これでいいでしょうか……?」
「はぁ? そんなんじゃオマンコ全部に色が付かないでしょうが。 もっとオマンコ全体で挟んで、万遍なく色付けするの。 体重をかけて、全力で朱肉をまぶしなさい」
「うう……わ、わかりました……んんっ」
言われるままに体重をかけ、膣を朱肉に押しつける。 身体全部が膣で支えられる恰好だ。 三角木馬に乗せられるっていうのは、きっとこういう気分だろう、と朋美は思った。
「もっと。 グリグリする」
「は、はい!」
ジクジク、グニュグニュ……腰を前後に振り、膣をめくれあげながら朱肉をつける。
「クリトリスの勃起が足りない。 自分で弄ってフル勃起させなさい」
「はいっ」
それまで下乳を揉んでいた右手を離し、シュルリと股間に滑らせる。 朋美は、実はオナニーが大好きで、平均して1日2回はオナッてしまうオナニストだ。 自分のツボを刺激すれば、ぺるん、すぐに包皮がめくれるクリトリス。 朱肉にクリトリスを擦られるのは痛いけれど、そうもいっていられない。 ピカピカに剝けたクリトリスにも、丹念に朱を塗したところで、
「よろしい。 くさそうなオマンコ……いえ、くっさいオマンコね。 そのくっさいオマンコを離しなさい」
女性は脚立から立ち上がらせ、朱肉の代わりに契約書を置いて、目で合図する。 朋美は黙って真っ赤になったオマンコを、再度脚立の上にもっていった。
「……」
クイ、顎で契約書を示す女性。 どうすればいいか言葉にしてくれないものの、朋美には分かった。 小さく頷き、オマンコを氏名欄の下にある余白に押しつける。 クリトリスの跡もつくように、念入りに……
「んっ……!」
つい嗚咽が漏れてしまう。 ペシャンコに潰されたクリトリスに始まって、陰唇が外側に押し広げられ、膣口、尿道の痕跡まで、グイグイ、ニュプン、朱肉が紙上にかたどった。
「実印っていうのはね、ビッチリ、きっちり押すモノよ。 1度でちゃんとつかなかったら、契約書は作り直さなくちゃいけないわ。 そうなったら、もうあと2日くらい『搾乳環』を着けて貰うから♪」
「ひっ!? う、ううっ!」
慌てて更に体重をかける。
下半身が動いて印がぶれないよう力を込めながら、グリグリとオマンコを脚立に押し当てる自分の姿が、部屋の正面に飾られた鏡に大写しになっていた。 無様で、いやらしくて、屈辱的としかいいようがない。 そんな自分から目を逸らし、朋美はオマンコを紙に捏ね続けた。
やがて、
「いつまで実印押すつもり? 変態にも度があるでしょうに……脚立でオナニーでもしてるのかしら。 いい加減になさい」
「っ! も、申し訳ありません!」
冷たく言い放つ女性の声に、朋美は慌てて股間を浮かせた。
「……」
そこには女の隠すべき部位が、くっきり鮮明に象られていて、思わず朋美は目を背ける。 自分のオマンコ……こんな形をしていたなんて知らなかった。 嫌らしい、饐えた香りが漂ってきそうな造形だった。
「あーら、きったないオマンコだこと。 でもまあいいわ、貴方が目指すのは『おまんこ星人』じゃないですもの。 端から『おまんこ』には期待してないし、自分でも、いかにもダメマンコってわかったでしょう。 陰唇も分厚いし、膣口はギザギザにじゃみってるし、それにクリトリスのおっきいこと……よっぽどオナニーが好きなのね。 どうなの?」
勝手な言葉を投げつけられて、でも朋美は返事をしないわけにはいかなかった。 無視すればどんな仕打ちを受けるか分からない。
「うぅ……そ、そうです」
「そうですって、何が? ちゃんと自分の言葉でお返事なさい」
「と、朋美のオマンコはダメマンコです……お、オナニーも大好きです」
「いいお返事ね♪ じゃ、この『提供書』はいただくわ。 もうすぐ貴方を担当する『みさき』がくるわ。 私の後輩なんだけど、しっかりしたコだから安心してね。 あとは彼女のいうことを聞いて、はやく一人前の『おっぱい星人』になりましょう」
「は、はい」
朋美のオマンコの型がついた契約書をひらひらさせながら、女性は部屋を出て行った。
後には股間に朱肉をこびりつかせたまま、がに股で佇む朋美が1人。 けれど、朋美は怖いとも寂しいとも思わなかった。 乳房を締めつける環が緩んだままだから、束の間であっても休息できる――それまで張りつめていた気持ちが微かに緩み、ほう、溜息がでいる。 自分の認めた契約書の悍ましさに朋美が気づくのは、まだもうしばらく先なのだった。