はじまり-3
紗英はいつの間にか、ドアの横の手すりにしがみつき、震える脚で電車が駅に着くのを待っていた。
着衣はすっかり整えられ、もうまばらな車内では、彼女に目を向ける者はほとんどいない。
降りなければいけない駅はとうに過ぎていた。それどころか、もう一時間目の始まる時間だ。
電車が見知らぬ駅に到着すると、紗英は足元の鞄を持ち上げ。ゆっくりとホームへ下りた。下りたのは彼女一人だった。そのまま、ベンチに座り込むと、疲れたように俯く。駅員が彼女を見つけ、気分が悪いの? と声をかけた。
「はい」か細い声で、少女が頷く。「その、電車の中で、寝ちゃって……起きたら、すごく気持ち悪くて……」
「大丈夫? ここで少し休む?」
「学校に、連絡……」
「ああ、そうか」
人の良さそうな駅員は、紗英から学生証を受け取ると、手際よく学校へ連絡を入れた。それから、お母さんかお父さんに迎えに来てもらう? と尋ねた。
紗英は首を左右に振って、だいぶ楽になってきたので……と答えた。
「そう。じゃあ、次の上りの電車は38分に来るからね。そっちのホーム。乗れそうなら乗るんだよ。無理そうなら声をかけて」
「はい……ありがとうございます。あ、お手洗いって……」
「ああ、こっち。あそこの自販機分かる? あのちょっと奥にあるから」
「ありがとうございます」
小さな頭が、ぺこりと会釈をする。 紗英は立ち上がって、ゆっくりとトイレに向かっていった。
気持ち悪いのだろうと、駅員は心配しつつも、さほど気に留めはしなかった。
トイレの個室に入った紗英は、薄汚れた洋式便器の蓋を閉め、そこに鞄を置くと、自分のスカートの裾に触れた。
するする、とたくし上げていく。あらわになった少女の太ももには、幾筋もの愛液が伝い落ちていた。それは膝をすぎ、紺色のハイソックスにまで染みているらしい。
「なんで、なんで……」
とうとう、少女はパンティが見えるまでスカートをまくり上げた。
トイレのドアに寄りかかり、まるで見えない誰かにパンティを見せつけるような姿勢で、なんで、と繰り返す。
どろどろに濡れた下着は、ぴったりと恥肉に張り付いて、その形を隠せなくなっていた。小さな肉芽、ふっくらと盛り上がった柔肉、その奥でひくつく秘裂まで、もしその場に人の目があれば、紗英の秘所がどのような形か、くっきりと知ることができただろう。
「なんで、まだ濡れちゃうの……」
そう、紗英の秘裂は、いまだひくつき、熱い愛液を零し続けていた。腰も、何かを求めるように揺れている。
あの後、絶頂を迎えた紗英を、無数の手は離そうとしなかった。しかし、それ以上のこともしなかった。紗英は、全身を服越しに揉まれ、撫でられ、浅いナカを下着越しに愛撫されるだけで、延々と弄ばれ続けた。
どれほどの時間だったのか分からない。痴漢たちは、人が大勢降りる駅でいっせいに下りていった。その流れに紗英を巻き込み、入口近くの手すりに彼女を預けて。紗英はもう、ブラの生地が胸に擦れるだけで、プリーツスカートが尻を撫でるだけで、クリトリスがパンティに触れるだけで、恥ずかしい場所からこんこんと蜜が溢れてくるのを止められなかった。
紗英の細い指が、そっと下着に伸びる。
「あっ、あっ!!」
秘裂をなぞっただけで、彼女は軽く達した。こわい、と紗英は思う。身体を鎮めたがったが、自分がどうなってしまうのか恐ろしくて、それ以上のことは出来なかった。
その場にへたり込みそうになる脚を叱咤し、きゅっと唇を噛む。
もはや用をなさないパンティは、いまや紗英を感じさせてしまうものでしかなかった。ブラジャーは外せないが、幸い紗英は真面目で、スカートも長い。意を決して、パンティの左右に指をかけ、そろそろと下ろす。
「あああ……」
とろぉ、と愛液が零れ落ちたのが自分でも分かる。可愛らしい下着は卑猥な糸を引き、まるで痴女の下着のようにびしょびしょになっていた。
「どうして……」
泣きそうになりながら下着を丸め、少し考えてから、それで脚を拭った。その感覚にすら反応してしまい、あまりきちんと拭き取ることは出来なかったが。当然、秘所はそのままだ。指でなぞっただけでアレなのだから。
「とにかく、帰って……シャワー……」
ぼんやりとした口調で、切れ切れに呟く。
ブラジャーの中で、じんじんと乳首が熱くなっていた。