母親-5
翌日放課後、人気の無い公園のベンチに座る僕と若葉ちゃん。ちなみにあの後不機嫌そうに店を再開するお爺さんと、この日は家にお泊りしたおばさん、無論彼は嫌がっていたけれども若葉ちゃんが強くお願いし。
「一緒に暮らさない…かぁ。」
「……。」
彼女と暮らせば今よりも豊かな生活は出来るし、何より実の母親との同居は子供にとって
一番良い事、それにお爺さんへの負担だって減らせる。けどそれは逆にお爺さんを寂しくさせる事にもなるし、それは事実上の引っ越しつまり転校しなければならない。
「ふふ、まるで佐伯君みたい。」
「そうだね。」
恐らく彼女の方が断然明るくて豊かだとは思うが確かに似ている。
「で、どうするの?」
「うーん、……お爺ちゃんには無理して欲しくないしお母さんとも居たいし。」
佐伯君の場合、色々と葛藤があったあげく若葉ちゃん達の居る北海道を離れ青森へ。
「行かないよね?」
「え?」
僕は不意に震えた声で、本音を。
「あ、いや別に、そのっ。」
「風馬君。」
僕が自身の感情を押し殺し落ち着いた口調で言う。
「良いよ君のしたいようにすれば。」
「…。」
「僕は君の考えについていくから…。」
そう、例え彼女が母親の元へ行ったとしても。
僕は、僕は……。
次回、第38話に続く。