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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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友情と成長-1

風でザァーと私達周辺に佇む木が音を立て、公園の静寂さを物語る。

「そっかぁー、分かったよ。」
「風馬君…。」

私の元に数年前家を出て行った母が戻って来た、そしてその母が私と一緒にここを離れて
暮らさないか?と言ってきた。私は最初断るつもりだった、お爺ちゃんを置いていけないし、何より風馬君と別れたくないから、でも。

「お爺ちゃん、幾ら言っても無茶ばかりするの、私が居る限り…。」
「うん。」
「それにお爺ちゃんが好きであると同時にお母さんの事も大好き、そりゃー私を置いて家を出てった時は少し恨んだケドこうして戻ってきて私の事を気に掛けて、やっぱ母親だし
今までずっと後悔して毎日罪悪感に見舞われてたと思うの。」
「……。」
「だから私が戻ってあげる事で失われ続けた親子の時間を取り戻す事が出来るのなら。」

私の考えに横やりを入れるでもなく、そして驚くでもなく落ち着いて耳を傾けてくれる。

「…やっぱ、君らしいねお爺さんをラクさせてあげたいし数年前に自分を捨てたお母さん
も恨むでもなく救ってあげたいって。」
「皆悪気はないのよ、ただちょっと道を間違えたダケだからこれから…、二人には幸せに
なって欲しい、お爺ちゃんは不満だろうけどいずれか分かってもらい、変な憎しみに囚われて老体に鞭打つ事なく自分のペースで余生を生き生きし、お母さんも私が一杯甘えて
支えてあげて、一緒に居てあげて、もう寂しい思い何かさせないし、まだ希望があるなら
保育士の仕事が出来るように全力で応援する!」

そう、皆にはずっと笑って居て欲しい、お爺ちゃんにお母さん、そして…。

「ただ、そうなると勿論…。」

目の前の彼氏とも別れなくてはならない、風馬君は以前言った「行かないよねっ!?」と
お母さんの元へ行ったら彼とはもう会えない、彼は心にポッカリと穴を開いて今後生活を
する事になる。私が嘗て佐伯君と付き合いその彼が青森へ行き、それで私が寂しい思いを
したように…。

私は今、育ての親と実の母親の為に、世界で一番大好きな人に自分と同じ嫌な思いをさせようとしている。

…今からでも変更しようか、そう思ってたけど。

「まぁーよくある事だよねっ!別に僕らだけに限った事じゃないし。」
「風馬君?」

急に爽やかで活気づいた口調になり出す。

「会いたい時はいつでも会える、電話でもメールでも、何なら手紙だって。」
「……。」

表情が徐々に曇り出す私。

「そんな顔しないで!青森の佐伯君だって同じ状況からそれが実現出来たじゃないか。」
「そうだけど。」
「…まぁ君に会えないのは寂しいよ、でも永遠の別れって訳じゃないし、この前言ったよね?君の好きなようにすればいい、君の考えを尊重する…って、だから若葉ちゃんの判断は正しいと思うよそれならお爺さんは無理しないだろうしお母さんも嬉しいだろうし。」
「………。」
「僕が少し会えないのを我慢すればいいだけの事、ここはここで一条君に伊吹さんだって
居るし、だから安心して行ってきなよ!」
「風馬、君。」

頼もしい言葉、それなら心おきなく…でも。

無邪気な笑顔の下で、悲鳴をあげている気がする、私に心配かけまいと基本的に泣き虫で甘えん坊のあの風馬君が必死に「行かないで!そんな人の所に行かないでずっと僕の傍に居てよ!」…本心はそう言って、いや叫んでいる気がする。

彼の為にそして自分自身の為に前言撤回したい、そして彼を思い切り抱きしめたい。

けど、それは出来ない、それは彼の勇気や私への思いを踏みにじる事になる。

そして私はお爺ちゃんが心配になってきたので彼を残し公園を後にした。

「じゃーね、風馬君。」
「うん!日にちが決まったら教えてね。」


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