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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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母親-3

「バカをほざくなっ!」
「でも、お爺ちゃん!」

病院を後にし、自宅の青果店へ颯爽に戻り僕らの心配そうな目を他所にぎこちなくも快活な足取りで営業を再開するお爺さん。

「お前は何も分かっちゃいない!店を経営する事がどんなに大事な事か!」
「それは…。」

身内ではない僕、でも彼女が心配でついていく事に。彼女の必死の訴えに聞く耳も貸さず
淡々と品出しを進める彼。

「いいか?この店には毎日多くの客が訪れる、常連客だって多い、事実ワシの事を気遣い
孫のお前の事も知っている人だっている。」
「……。」
「皆ここを必要としているんだ、分かってるとは思うが収入がなきゃ人は生きていけない
食べていけない、こんな老いぼれが自分の身を案じて店を閉じて見ろ?立待ち金は入ってこない、そうなれば若葉お前はいつも通りの暮らしは出来ないぞ。」

若葉ちゃんから聞いた事がある、この青果店は先祖代々受け継がれてきたとか。

「…だからって無理して良いの?そんなんじゃ経営何て出来ないよ、今日はたまたま彼が
ここに来て発見してくれたからいいようなものの、もし誰も居なかったら?というか客が
それも一杯訪れている時にまた倒れたら?」
「心配すんなっ!今度はもうあんな事。」
「二度目でしょ!?もうそんな意地…。」
「それは…じゃが店はどうする?さっきも言ったが。」
「私がバイトでもして。」
「いねっ!=口を慎め。それは絶対駄目だ!」
「多少貧乏になるくらいどうって事ないよ。」
「こんな老いぼれ何かの為に働いて不自由な思いをしようってのか?あり得ぬ。」
「そんなんじゃない!私はただお爺ちゃんの力になりたいんだってこんな私を引き取って
くれて、それからは老体に鞭打って、お互いに支えあえば。」
「……。」

流石に言葉を失う彼、それまで俊敏に動かしていた手を止め。

「ならん…。」
「お爺ちゃん!」
「お前に不自由な思いはさせん!何と言おうとが。」

自分の体がボロボロになろうとも孫を幸せにしてやりたい、それが彼の主張。

「そんな孫にここまで心配掛けてる時点ですっごく不自由何だけど…。」
「いねっ!」

頑固なお爺さんに流石の彼女も低いトーンで怒る。

「まぁ、ちょっと落ち着いて二人とも。」
「これはわしとコイツの問題じゃ。」
「悪いけど風馬君は少し黙ってて。」
「……。」

見かねて間に入るも案の定一蹴され。

「そんなに私を大事にしたいの?」
「当然じゃ、お前はわしの可愛い孫、お前は自分がわしの負担になっていると思っておる
ようじゃがそれは大間違いだ、若葉が来てくれたお陰でわしはまた生きる希望を店をこうして生き生きと出来るんじゃ。」

彼の奥さんは数年前に亡くなった、それ以来心にぽっかりと穴が空き、夫婦で営んできた
店も一時は閉じていたらしく。

「自分が生活の負担になってると言い出したら世のペット買いだす人たちはどうなる?子を持つ親はどうだって言うんだ?」

そこは正しいな、心優しい彼女だからそこまで気に掛けるのだろう。

「…それだけじゃないでしょ?私を大事にしようとするのは。」
「な、何を…。」

どういう事?彼女のお父さんが死んでそれで引き取って。

「怒り…もあるんでしょ?私のお母さんに対して。」
「!それは。」
「…嘗て私のお母さんは私を置いて家を出た、つまりお爺ちゃんにとっての娘が自分勝手に家を飛び出したりしなければお父さんが苦労して、そしてここに引き取られる事もなかった、だから不甲斐ない自分の娘へのやるせない憤りを私をそれもそんな二回も倒れる程無理してまで育てる事によってその思いを満足させようとしてるんでしょ?」
「………。」

成る程ね、彼女にしては厳しい言い草。

「御免ねお爺ちゃんキツイ言い方して、でもそれが本音でしょうから。」
「若菜…。」

痛い所を突かれ、意気消沈する彼、そして「若菜」と言う言葉、誰?若葉ちゃんと名前が
一文字違いだが、ひょっとして。

「この子の言う通りよ、お父さん。」
「っ!!」

するとそこに若葉ちゃんに良く似た女性が現れて。

「わ、若菜…お前なのかっ!」
「……。」

まるでこの世の物とは思えないような顔で目を丸くし、全く会っていない娘を見つめ、その彼女が娘つまり若葉ちゃんを神妙な面持ちで見つめ。

「お、母さん?」


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