第1章 真夜中の逃避行-2
第1章 真夜中の逃避行(2)
田島が友子の体を楽しんでいるすきに、美弥は研究室に忍び込んだ。
(早くコピーをしなくちゃ……)
友子は美弥が研究所を安全に脱出するまで、田島を引き留めておくのが任務だったので、濃厚なサービスを施していた。
美弥はロッカーの鍵を開け、ファイルを取り出し、机に拡げた。三脚をセットし、マイクロフィルムで撮影をした。厚いファイルを写し取るのは結構な時間がかかった。
(あと、7枚……)
「ああっ……、いいっ……」
場所を変えたのか、遠くの職員休養室の方から友子の声がした。
(あと、2枚……)
薄暗い部屋がフラッシュの閃光で時折明るくなる。
(よし、これでいいわ)
美弥が職員休養室の前を通ると、中から友子の押し殺したような声が聞こえてきた。
「ううぅ……ああっ。いいわ……ねぇ、もっと……」
「友ちゃん、もっと声を出してもいいんだぞ。今日はだれもいないんだからな……もっと、よがるんだ。さあ……これでどうだ」
「ああ。いい……狂っちゃう……友子、狂っちゃう……」
「狂え、狂え。今、たっぷり中に出してやるからな」
「中はだめよ。お願い!中だけはやめて」
「心配するな!孕んでもいいものがあるんだから。おまえで試してやる」
「ああ……しないで」
(友ちゃん。ごめんね)
美弥は休養室の前でちょっと立ち止まり、心の中で叫んだ。
(こんな方法でしかフィルムを運べないのかしら)
研究所を後にした美弥は、異物感こそなかったが、身体の奥に隠したフィルムのことを考えると恥ずかしくなってきた。
座席の上で、何度も腰のあたりが気になり座り直した。いつの間にか睡魔に襲われたようだ。
高崎をすぎた頃から夜も白んできた。窓の外には人家が多くなり、列車の中がしだいに混んできた。
もうすぐ上野に着くという頃、見えないはずの他人の視線を感じ始めて目が覚めた。
(あっ、寝たんだわ……だれか見てる……誰っ……)
ゆっくり回りを見回したが誰もが追跡者に見えてくる。ボックス席もいつの間にか満席となり、だらしなく座っていたこと気がつき、少し頬が赤らんだ。
(誰っ……)
<第1章 つづく>