変容-3
「今日でピンサロも終わりだ。よく頑張った。明日からしばらくは俺専用の便器として使ってやるからな。」
そう言って頭を撫でる男を、恵はチンポをくわえたまま見上げた。
滅多にない労いの言葉に加え、専用の精液便器として男のそばに居れる事がよほど嬉しいのだろう。恵は微笑み、何事かつぶやくとともにアナルプラグが入ったままの尻を振って応えた。
チン…チッ…チッ…
小さな金属音が恵の尻辺りから聞こえてくる。
誘拐されて以来、下着を上下ともに一度たりとも着けていない恵…その音はクリトリスと陰唇に付けられたピアス同士が当たる音だった。
全ての歯とともに、気管切開によって声を失った恵の返事は非常に不明瞭だったが、その分、犬の尾の様に尻を振り、ピアスの音を鳴らす事で喜びを表現する恵…男はその禿頭をポンポンと叩き言葉をかける。
「気にするな。今日はこれから美味いもんでも食いに行くか。」
恵には知らされていないが、アダルトビデオやデリヘル、ソープ、ピンサロで働かせて、充分に減価償却が済んだ恵を、男は二束三文で売り払った。
恵は数日後には遠洋漁業船に乗せられ、男達の精液処理をするために、長期間にわたって昼夜を問わずザーメン便器として使用される予定になっていた。
途中で壊れるようならば海洋投棄され、生き延びたとしても次の航海に使用される。男は過去数人の女をこのルートで廃棄してきたが、経験上、二度目の航海から生きて戻ってきた女はいない。恵も間違いなくそうなるだろうと思われた。
かつて生気に満ちた人妻音楽教師だった恵は、公衆便所の便器として墓も残さず死ぬことが確定していた。
男はここ1ヶ月ほどは携帯用の小便器としてしか恵を使っていなかったが、この日はタクシーの中でありながら、恵の口腔に射精した。
口全体で脈打つペニスを感じながら、1ヶ月ぶりのご主人様のザーメンをうっとりした表情で飲み下していく恵は、射精を終えても肉棒から口を離そうとしない。
“この味、久しぶり…”
恵はこの一年で何百人もの精液、回数にしたら二千を猶に超える精液を味わった。生臭いもの、苦いもの、甘いもの、さらっとしたもの、粘り気が強いもの…人によって、また体調によって随分とその味が変わる事を身をもって知った。
しかし、単に最も多く味わってきたからかもしれないが、色々な精液の中でもご主人様のザーメンが一番美味しい…。
ソムリエの様にザーメンの味をテイスティングする恵に教師だった頃の面影は欠片も残されていない。様々な肉体改造を施され、もはや正常とはほど遠い見た目にふさわしい精神の有り様だった。
そう、
全ての歯を失い、
髪を失い、
声を失い、
職を失い、
家族を失い、
人としての尊厳を失った。
体中の穴という穴を無数の男達に犯し尽くされ、完全な肉便器に堕した現在の恵にとっては、男のそばこそがこの世で唯一残された居場所で有り、どんな形であれ、男に求められることこそが存在価値の全てであった。
“ずっと…”
恵は思う。
“ずっとこうしてしゃぶっていたい…”