IFP-序章--2
「へーへー、ラブラブですな。結婚式はいつだっけ?」
「今年の秋。琴音の一番好きなキンモクセイが咲く季節がいいんだって。琴音ときたらな、僕ちんに………」
「わかったよ、それより早く行こうぜ。体がうずいて仕方ない。」
俺はさっさと一人で歩き出した。
「なんだよ〜、聞いてきたのは圭だろ。親友の色惚けくらい付き合えよ〜。」
後ろから走ってきた慎介は俺の横にきて歩調をあわせ、顔をこちらに向けて頬をふくらませる。
(……キモイ、本当に俺と同い年か?いや精神年齢は実際の年歳の半分ぐらいなはず。)
軽く腹の中で嘲笑い、俺はちょっとひきながら両手で慎介の頬のふくらみをつぶす。するとまたふくらませる。
「はぁ〜、ふざけんなよ。相手してほしけりゃ、着いてからいくらでもしてやる。」
(全く誰が親友だ………)
本当にコイツは俺をイラつかせる。慎介は人懐っこくて誰にでも愛想がいい上に明るく、なかなかの美形でスポーツマン。対して俺は感情を出すのが苦手で口も悪いからか、自然に敵ばかりつくってしまう。別にそれはそれで俺にとって都合が良いのだが……
俺達は途中でコンビニに寄ってアイスを買ってから目的地に向かう。十字路にさしかかったところで、いきなり慎介は
「なぁ、圭は好きなヤツいないのか?」
(!?)
突然何を血迷ったことをいうのやら。それもいつものへらへらした顔じゃなく、真剣な顔で…
「いない。」
「即答かよ。つまんないヤツだなぁ〜。」
鼻をかきながらまた言葉を続ける。
「………頼みがあるんだけどさ、もし俺が……その………いなくなったとき、琴音のこと頼みたいんだ。」
…………は?コイツは何を言っているんだ?いなくなる?意味が分からない。だが表情は真剣なままだった。
「いなくなる予定でもあるのか?」
とりあえず聞いてみる。
「別にそんなことはないけど、ちょっとな…………」
慎介が立ち止まって、俺も立ち止まる。しばらく沈黙が続くが、どうすればいいのか分からない。
「……あれ〜?もしかして圭ちゃんは心配してくれてるの?嬉しいなぁ♪♪」
慎介はまたもとのひょうひょうとした顔になって言ったあと、“頼んだぞ。”
と小さく囁いた気がした。
「まぁ、もし圭に彼女がいたらまずその子が普通の人か疑うね。」
俺は師匠が大好きな爽の苺を振り回しながら、こっちに向かってニヤニヤする慎介を睨む………はずだった。
………………ドン!!!!
…ドサ…………
…………え?
今、何がおこったんだ?
…なんで慎介が地面に寝ているんだ?
どうして頭から血が流れているんだ?
「…………………慎介?」