間接エッチ-2
しばらくして、歩がお風呂から上がったとき、着替えを見て驚いた。
グレーのトレーナーの上下。さっき彼女が来ていたものとまったく同じだった。服に頭を通すとやわらかな女性の香りがした。心なしか暖かい。
言われた通りパンツなしで直接ズボンを履くと、最初は違和感があったが意外とすぐになれる。
キッチンではさっきの彼女がピンクのトレーナーの上下を着て鼻歌を歌いながらミルクを温めていた。
「あ、出たのね。今ココア入れるからそこに座って。」
歩が来た気配に気づき、テーブルに着くようにうながした。
歩は言われた通りテーブルに着いた。
大きめのマグカップに入ったココアを歩の目の前にに置き、持ち手を歩が持ちやすい位置に動かした。自分も同じくらいのマグカップを持ち歩の前に腰を下す。
「どうぞ」
「あ、はい、いただきます。」
彼女は歩の動きをじいっと見つめる。歩はココアを手にするとふうふうとココアの表面を吹き、ゆっくりココアを口にした。
歩の表情が見る見るほころぶ。
「うん、その表情合格!。そのトレーナーも似合ってるじゃん。」
彼女は嬉しそうに言った。
「あ、このトレーナー・・・」
「うん、ごめんね。他に男性に似合いそうな服が無かったの。まさかこんなピンクの服を着せるわけにもいかないから。それ、さっきあたしが着ていた服だけど、我慢してね。」
「で、自己紹介ね。はじめまして、あたしは、智子の姉の和子と言います。よろしくね。」
歩がお礼を言おうとするのをさえぎるように和子は自己紹介をし、握手を求めるように手を出した。
歩は握手に応じ「こちらこそ、よろしくお願いします。」と言った。
「智子さんにお姉さんが居るなんて知りませんでした。」
「出戻りなの。ちょうど智子が1年間アメリカ留学で家を開けるから帰って来ないかって言われて帰って来ちゃたわけ。」
「で、歩くんは智子のボーイフレンドでしょ。」
和子は歩が質問する前に質問した。
歩は顔を赤くして首を横にプルプルと振った。
「智子さんは優しいからこんな僕の相手をしてくれますが、あくまで僕の片思いなんです。ストーカーみたいなこともしてしまったし。」
「ふぅん・・。じゃあ、智子のどこに魅かれたの？」
「全てです。多分本当の恋をはじめてしたのだと思います。用事も無いのにただ会いたい。顔が見たい、声が聴きたい、何を話していいのか分からないけど話がしたい。会うだけですごく幸せな気分にしてくれました。」
「智子に好きって言った？ その気持ち伝えたの？」
「はい、何度か。」
「智子は好きって言ってくれないの？」
「言ってくれます。」
「じゃあどうして片思いなの。」
「智子さんには、もっとふさわしい人がいるはずです。僕なんかにはもったいない。僕は片思いで十分です。」
「・・あーめんどくさい。智子はあなたのどこがいいのかしら。いい、あの子はあなたを好きなの。あたしを呼び戻したのも、あなたのためなの。そのココアも、あなたの好きな入れ方をあの子があたしに教え込んだの。あの子が一番怖いのは、留学中に知らない女にあなたが取られちゃうことなの。わかる？ だからあなたの片思いなんて言わないであげて、あの子がかわいそうだから。・・・で、どうして泣いてるの？ あたし、きつく言い過ぎた？」
歩は両目に貯めた涙をあわててこすった。
「ごめんなさい。なんかうれしくて。そばに居ないのに智子さんのぬくもりが感じられて。」
和子は歩の顔をしばらくじいっと見つめる。
「智子の部屋に行こうか。も少しお話ししましょ。乾燥機って結構時間かかるから。」