本気の恋-2
「まぁ、お金が底を尽きたんですか?」
「そうなのよー。」
私は柊さんを誘い二人で肩を並べ下校する事に。
佐伯君が居る青森に何度も、と言っても本当は3、4回程度で、それでも札幌から青森へ
電車での移動は費用がバカにならないくらいで、往復を込めると結構な額で。
姉からの支援金、私のバイト代で稼いでいたけれど最早限界だった。
「でもまぁ良いよね、佐伯君に会えて、元々転校してもう二度と会話も出来ないと思った
のに、何度かあって旅行までして。」
働いたかいはあったってものよ、もう彼には会えないけど、でも満足だ…満足。
「先輩はどうして彼に会おうと思ったんです?」
「そりゃーだって大変そうだったからよ、手伝ってあげないと。」
「それは彼が元彼だからですか?」
「まぁーね、昔のよしみって奴かな。」
そうだ、これは一種のボランティアなのかもしれない。
「もう会えないんですか?」
「えぇなんせお金が無いんだから、そもそも遠いですもの。」
「辛く、ないんですか?」
「別に…、私はただ手伝いたいだけで。」
そうだ、元カノとして心配した、ただそれだけの事。
「本当に、そうなんですか?」
「も、勿論よ。」
「…ではただの手伝いで青森まで行ったんですか?」
「そ、それは。」
ギクリとする私。
「本当は彼に近づいて、願わくば告白されたい…そう思ってるんですよね?」
「そ、そんな事は。」
「若しくはただ彼の傍に居たくて。」
「違う!元カレだし、ただ手助けしてあげたいと思って。」
「それだけで青森からここまで往復というのは。」
「…好かれなくたっていい、ただ大好きな人の助けになればそれでいいし。」
そうだよ、それがどれだけ楽しい事か。
「なら、どうして泣いているんですか?」
「へっ!?私がぁ!何で…。」
咄嗟に目の下に触れるが濡れた感触何てない。
「泣いてますよ、心がずっと苦しんでます。」
「柊、さん。」
「…本当は、彼の事が好きなんでしょ?未だに。」
「…そうだよ、でも仕方ないでしょ!こればかりは…。」
彼は恐らく私に感謝はしてると思う、でもそれで振り向いてくれる…何てそんな図々しい
考えは…。
「良いじゃないですか、そう思ったって。」
「へっ!?分かるの?」
私も彼女も似たような境遇、何かで繋がっているのかもしれない。
「えぇ、なんとなくは。」
「でももう無理よ、彼の為に色々してあげて、願わくば振り向いて私の事を好きになって
欲しい、…それが無理でも私には感謝して少なくとも彼の記憶には残っていて欲しい。」
それでなくても大好きな人の為に何か出来た、そう思えば青森訪問はいずれにしたって
良い行動である事に違いない。
「告白、しないんですか?そんなに好きなら。」
「そんな事、出来る訳ないわ。」
告白する勇気がないくせに態々青森まで行く私って。
「青森まで行く事こそが先輩が彼に対して強い想いがある何よりの証拠です、ただの元彼
なら普通はここまではしませんっ!」
「それは…。」
「先輩はそうやってお手伝いをする事によって満足してるんですよ、彼は自分に好意を
寄せてくれているかも知れないって。」
「えぇそうよっ!仕方がないじゃない!私にそこまでの勇気何て…。」
もし、断られたら…そう思うと。
「私が、聞いといてあげましょうか?」
「およしないさい!そういう問題じゃない。」
「先輩…。」
「振られましたはいそうですか、じゃー違う人探しましょう、そう簡単じゃないのっ!
彼は、彼は特別なの、不器用だけど優しくて。」
「分かります!」
目を輝かせ、即答する。すっかり忘れて居たけどこの子も嘗て彼の恋人だったっけ。
「だから尚更、ハッキリさせましょう!ここでうじうじするのは苦痛でしかありませんからね。」
「確かに…。」
「私もすっかり巴ちゃんみたいになったな。」
伊吹さんも柊さんも私も同じ、一度彼と付き合いそして別れた、それでも二人と私の違い
はその後新しい恋人がいるかどうかだ、失恋したとしても新たに恋人が居れば心の傷も
和らぐもの。
「遥々青森まで行ったんです、嫌いである筈はまずないです。」
「でも…。」
彼の本音、聞きたいようなそうでないような。
別に、好かれなくたって…でも。