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離婚夫婦
【熟女/人妻 官能小説】

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菜緒-3

「・・・・・・」
 夫婦揃って声も出なかった。涙も出なかった。
 自分たちのことだけしか考えなかった浅はかさを恥じるとともに、『断腸の想い』として臨んだ菜緒への通告。何てことは無い、単なる親の自分勝手な振る舞いなだけだ。
 一番家族のことを考えていたのが菜緒だったことに、今更ながら気付かされる結果となってしまった。
「何かおかしいなぁとは思ってたんだ・・・・・・」
 子供は敏感である。夫婦の不穏な空気をいち早く読み取り、自分なりに考えていたのだ。おそらくは、事の結果もある程度は予測していたのだろう。そして、遠くないいつか来る悲しい現実に怯えながら日々生活していたのだ。
 それに引き換え、当事者たる自分たちは、不貞な欲情に溺れ、若い肉体を貪っていたかと思うと謝罪の言葉すら発することもできない。
 
 だが、それでも『離婚』という現実は変えることも出来ない。
 ここまで状況が進んでしまっているのだから、いかに愛する菜緒の願望と言えども、覆すことは出来ない。
「すまなかった。菜緒のことを考えながら話し合ってきたつもりだったけど、ひとっつも考えていなかったようだ。パパとママが勝手なだけだった」
 そう言って豊川はテーブルに額が付くほど頭を下げた。
 望未は涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになっていた。謝ることすら出来ず、嗚咽をあげて泣くばかりだった。
「私は、3人で暮らしたかった」
 菜緒はそう言い残し、自分の部屋に入っていった。

 しーんと静まり返ったリビングには呆然と佇む豊川と、泣き続ける望未の二人が取り残された。
 『菜緒のことが一番』『まずは菜緒ありき』を考えて、これまでの離婚協議をしてきたはずなのに・・・・・・
 まさかこのような言葉が菜緒から返って来るとは二人とも微塵も思っていなかった。
 結局は、自分自身のことばかりしか考えていなかったことに気付かされる結果となった。
 冷静に物事を考えていたのは菜緒だけで、夫婦共々自己中心的に進めてしまったことに、早くも後悔の気持ちが膨らんできた。
 とはいっても、今更離婚話を無かったことにすることも出来ず、菜緒の心が傷ついただけで、決まっていた結論が変わることは無かった。

 後日、父親(豊川)とのかかわりあいについても話し合いが持たれ、月に一度は父親と一緒に過ごす日を設定すること。学校行事への参加はOK。進路相談その他菜緒の将来にかかわることについては、父母揃って相談すること。などを取決めした。
 夫婦関係が終了しても、子育てについては元夫婦同士協力して行っていくこととした。
 当初、望未は一人で育て上げてみせると言い張っていたが、これから思春期を迎え、色々と難しい年頃となっていくことを考えれば、望未一人で背負い込ませるわけにはいかない。 
 ましてや金銭面でもこれまでほどの余裕が生まれない状況からすれば、父親である豊川が何らかの形で関与して然るべきだと思っていた。
(この辺がプライドが強いところなんだろうな)
 自分のことは棚に上げておきながら、他人に対しては厳しく追及するような輩には困ってしまうが、逆に自分が自分がと周りの意見に聞く耳を持たない人間も困ってしまう。
 後者である望未はまさにその典型だといえる。器量も良く、性格だって悪くは無い望未だったが、何事につけても自分だけで解決しようとする悪い癖があった。その裏には、自分だけで何とかできるという自負があり、他人に手を借りることにプライドが反するのだと思っていた。
 菜緒の養育についてもそうに違いない。彼女のキャラクターが色濃く、悪い方に出てしまった結果だと言えよう。
 夜の夫婦生活でもその性格が出ていた。最初のうちは、感じていることすら見せる事を拒むくらいで、喘ぎ声を発することも良しとしなかった時期もあった。
 結婚後、多少なりとも積極的にはなり、普通に喘ぐようにもなったし、絶頂を迎える姿やその時の声も恥ずかしげもなく晒してくれるようにはなったけれど、淫らな言葉や単語は最後まで発してくれるようなことは無かった。
 もし、望未から『チンポ』や『オマンコ』などの卑猥な言葉を口にしてくれるような性生活であったならば、もっと積極的な夜の営みになったことだろう。そして、その影響が普段の生活に潤いや活性を与えてくれたのならば、違った夫婦の形を構築出来ていたかもしれない。

 後日、菜緒は両親の決断を受け入れ、望未と生活することが決まった。
 学校の関係から、引越は年度替わりのタイミングにすることになった。それまでは今のままの生活を継続していく。
 継続するにはするが、基本、豊川が家に戻ることはしない。単身赴任先のアパートもあることだし、離婚が決まっているのにわざわざ週末に帰る必要もあるまい。今のマンションの家賃は払い続けるが、望未と菜緒だけが暮らしていくだけである。
 引越の際は、望未たちが必要な物だけ部屋から持ち出してもらい、不要な物はそのままマンションに残してもらうことにした。望未たちの引っ越しが完了後、豊川が最終確認し、要不要の精査をすることにした。
 離婚届は、会えるうちに判を押し、提出するだけの準備はしておくことにした。提出も、菜緒の転校するタイミングで提出する。菜緒が氏名変更することで色々と詮索されることが無いよう、配慮したつもりだ。

 月日は流れ、3月に入った頃、望未からメールが入った。
『3月の20日前後に引越します』と、用件だけを伝える短いメールだった。
 豊川は年度収めとあって、3月中に片付けに出向くことは難しいだろうなと思った。その分家賃がもったいないけれど仕方がないと諦めた。

 3月21日。
 『今日引越が終わりました。長い間お世話になりました』
 引越完了の短いメールが来た。
 翌日、離婚届を提出し、戸籍上でも離婚が成立した。
 
 


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