稲葉明日香-1
「小鳥遊が警察に捕まったらしいな。」
「あぁ、例の噂は本当だったな。」
逮捕翌日も教室内に飛び交う無慈悲な会話。
「でもそれは間違いだって…。」
「だけど現にポリスが来て、アイツを連行したんだろ?」
「そ、それは…。」
こんな嫌な教室の風景は前にもあった、けどあの時は早乙女先輩、と言うかただのクラス
メートが黒板に落書きをしただけ、故に心無い噂話があってもそれを信じない人も多く
居た、けど彼らの言うように今回は警察がこの学校に来た、本物をクラスの大半がそれを
朝に目撃した、そのせいで彼の罪がより濃厚となり。あの時と違う所は他にもある、それは噂されている本人がこの場に居ない事、幸か不幸か今は警察の取り調べ室で事情を問われてる所だろう。それに今噂されている人はあの時と違ってただの幼馴染じゃない。
だから今のこの状況は地獄以外の何物でもない、自分の大好きな人が殺人犯としてあれこれデリカシーのない勝手は想像を膨らませて。
「じゃー私達、彼をあの佐伯君を刺した人と今まで勉強してたの?」
「酷いっ!彼をそんな目に遭わせておいてよくぞまぁ今までヘラヘラとっ!」
「可愛い顔して、やっぱり性悪男だな、アイツ。」
やめて…。
「もう学校に来ないで欲しい。」
「先生達も何やってるんだろうね、そんな人殺し野放しにして。」
「ストーカーに人殺し、とんでもない野郎だな。」
嫌…。
「やべっ!危うく犯罪者の席に座る所だった。」
「汚ねぇー。」
「このクラスに戻って来たらどうしてやろうか?」
「ちょっとしめてやらないとな。」
駄目…。
「ホント、よくぞまぁあんな酷い事が出来るよねぇー。」
「あたる様、可哀想。」
「人間のクズ…ね。」
っ!!
それまで彼の犯罪を否定していた女子達までも牙をむき出し、彼の悪口を言う。
私はもう胸が爆発しそうだ、溜まらず教室を出るも。
「おい聞いたか、2年の生徒が警察に捕まったってよ。」
「まじでぇー、信じらんなーい。」
教室の落書きではなく、校門であれだけ騒ぎになったせいで学校中に噂が拡散するという
最悪の事態…、先生達も緊急ミーティングを行ってたとか…。
廊下に出ても彼への誹謗批判は止む事はなく。
「うっうう…、風馬…君。」
何とか人気の無い所を見つけ一気に泣き出す。