い-3
啓たちのチームは今日の夕方7時までにN.Y.に資料を送らなければならなくて
それが終わったら、全員で打ち上げだと言っていた。
今は10時。
部に残っている人もいないはずだ。
「引き受けてくれるのか?」
ホッとしたような顔をした重田さんを横眼で見ながら
「さっさと終わらせましょう」
と席を立つ。
会社に着くと、企画部の階は暗くて
常備灯が付いているだけだった。
すでに廊下も人の動きを感知して電気が付くセンサーに切り替わっていて
私たちが行く先々で暗い廊下の電気が付いて行った。
同じ階の自販機コーナーの椅子を指差して
「重田さんはここにいてください」
と、促すと
「一緒に行くよ」
と言う。
「いえ、万が一部の人に見つかった時に
私一人の方が言い訳が通用します」
「そうか」
そう言って、自販機コーナーの椅子に座る。
私はCDを受け取って、部の中に入った。
必要な場所だけの電気を付けて
マスターファイルを保有している
啓のチームのリーダーの机に座った。