再び、青森へ…-9
改めてこんな日がくるとは夢にも思わなかった、嘗ていがみ合い挙句俺を刺した奴と仲良く一緒に湯を浸かる日が来ようとは。
「隣、良いかな?」
「あ、あぁ。」
馴れ馴れしくいや、遠慮はしているんだろうけど。俺も変に抵抗しない。
「怪我は大丈夫?」
「へ?」
怪我、怪我、あぁ刺された時の事か、彼からしたら。
「あの事件から大分経ったろ?だから別に。」
「僕、本当に何て事してしまったんだろう、最低だよね。」
こうしてみるとホント穏やかな顔してるな。
「仕方ないよ…、それだけ彼女の事好きだって事なんだし。」
「……。」
「俺だってお前の立場だったら同じ事するだろうし、それだけだよ。」
「でも…。」
「お前は良い奴だっ!ちょっと歯車が狂っただけだよ。」
最初は確かに彼が憎くて仕方がなかった、けど彼との騒動を終えて諦めて彼女の事を陰ながら見守ろうと言う姿勢を見てからはそんな憎しみもなくなってきて。
「佐伯君は、お父さんとの生活が嫌で、そして青森のお兄さんの所に居るんだよね。」
「そうだ、今も、まぁ大変な時は大変だけどな。」
だけど、あの生活に比べたら……ていうか親父今は何してるんだろうか。
「可哀想、親の大人の都合で。」
「まぁしゃーないわな、親父だって人間だし。」
「僕に何か出来る事はない?」
「へっ?」
「助けたいんだ、それは若葉ちゃんの為と言うより君自身の為に。」
「…風馬。」
無意識の内に彼を、風馬…と言っていた。
「不器用だけど優しくて面倒見が良いし、だから友達として。」
お互いに良い関係は持ちたいしな、それに彼は柊さんが病院でお爺さんが手術を受けて
恐い思いをしてる時に急いで駆けつけてくれた、それは自分が振り向いて欲しいとかでは
なくただ単に彼女を助けたいと思って。
ほんと、純粋で心の優しい人、何だろうな。
そして俺は手を出し。
「あぁっ!これから俺たちは親友だっ!遠くにいるけど宜しくなっ風馬っ!」
「…うん、若葉ちゃんの事は責任を持って大事に幸せにするから。」
「ありがとうっ!」
何だか最高に良い一日に思えて来た。