黒い聖母-1
疲れた舌の動きを指先に渡し、唇を肌に沿わせたまま滑り下ろしたルルは、もう縮んでいた鉄矢の袋を、口の奥に吸い伸ばした。その途端、ルルの黒髪一杯に男が飛び散った。うっとりと見下ろす鉄矢の目に一瞬、星が掛かった夏の夜空のような鮮やかさだった。
立ち姿の鉄矢の前にルルは座り、まずは鉄矢を励ましてから、本当に始めようとしていたところだった。我慢できなかったと謝る鉄矢にルルは笑顔を返すと、まだ勢いよく噴き出す先を喉に入れた。
「ルル、僕は何をしたらいいんだろう。」
鉄矢がそのままの姿勢で聞いた。
「勉強ばかりしていても、収集癖みたいなものじゃないか。でも僕にはこれしか出来ることがなさそうだ。」
気持ちよさに耐えているふうの気張った口調だった。
ルルは鉄矢を横にさせ、その上に自分も身を横たえた。尻は鉄矢の顔に置き、口は鉄矢を吸い続けた。随分と男の体が分かってきたルルは、鉄矢を茎の始まる根元の、袋の裏の更に奥から搾り上げ、残りなく出してやろうとしていた。
「あたしはね」
出てくるときに合わせながら、口を離してルルが途切れ途切れ言った。
「読み書きが少し前までできなかったの。出来るのは習った日本語のほう。走ってばかりいて、何にも知らないんだ。今でも走ることしかできないの。」
一度済んでしまった鉄矢には、ルルのにおいがいつもより濃く感じられた。むせながら舌で掻き分けて、つつくようにさすった。
「そんなに頭いいんだから、鉄矢にはできることが沢山あるよ。あたしたち、ここで暮らすんでしょう? 特区の人、よそで大変だけど、あたしもきっと同じ。ここが暮らしやすいの。鉄矢が居てくれないとだめだよ。」
ルルは鉄矢の鼻も口も一杯にする多さで、求めている気持ちを表した。
危険と呼ばれる特区に関わり、身を置いてみたら、そこに新しい希望が開けた。
自分がこれから何をしたらいいのかは、ルルとさえいれば、この聖母が引き出してくれる。心配しないで、この人が幸せになるよう行動していこう。それで畢竟みんなも幸せになるのだからと、鉄矢は思った。