新しい恋人-1
人生とは不思議なものだ…。閑静な住宅街のごく普通の一軒家の前に私はずっしりと佇んでいる。この家の住人は嘗て私にしつこく言い寄り、恋人いや元、恋人を襲い生死の境を彷徨わした人。故にそっちからいちいち私の自宅にまで押し掛ける事はあってもこっちからこの家に参る事は絶対に無いと思っていた。
表札には「小鳥遊」と今改めて見ても珍しい苗字が私の視界に入り、間違いのないよう確認をして、少し躊躇しつつもインターホンを押し。
「はい?…あっ!若葉ちゃんっ!?どうしたの?」
つい先週告白した相手が現れ、私が訪問した事に驚きもあるけど嬉しそうな笑みを浮かべる風馬君。
「約束してた水族館での初デート。」
「あぁ、こっちから迎えに行くのに…。」
「何だか居ても立ってもいられなくて。」
私の方から行かないと告白した意味がない感じがするし、彼が私の家に迎えに来たら何処かあの日を思い返すし、何より風馬君に会いたい気持ちが自分でも疑問に感じるくらいに
徐々に大きく膨らんでいって。
「あっ!待ってて!今支度するからぁー!」
「風馬?若葉ちゃん来てるんだったら家にあげたら?」
「お母さーん!バック何処にやったっけ?」
「居間に放りっぱなしでしょー、んもぅー!」
昔と変わらない少し抜けてる彼、そこに今まで不気味なストーカーをしてた恐い彼の面影はまるでない。