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君が泣かないためならば
【女性向け 官能小説】

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-1


紗江子ちゃんがウチの部の浅岡課長を(おそらく)なぐって
別れたその夜。
紗江子ちゃんと私と啓の3人はいつもの居酒屋にいた。

啓が呼んだ弟は明らかに紗江子ちゃん狙いで
司と名乗ったその子は顔は啓よりも数段イイ男だった。

司君をからかって、浅岡さんと別れた紗江子ちゃんと飲んで。
2人で愚痴を言い、酔った。

そんな私たちを啓と司君は困ったように、見守って。
啓がお酒をセーブしていたのは分かった。

私たちを送ってくれるためだろう。

「紗江子、泣いて忘れられるなら泣いて忘れろ」
啓が紗江子ちゃんに言った言葉が私にも向けられているようだった。

紗江子ちゃんは「平気よ」と強がって涙を隠すために横を向く。

泣いて忘れられるなら、私はもう何十回も何百回も
重田さんを忘れたことになるのに。
なんでいつまでもあの人は私の心の中にいるんだろう。

紗江子ちゃんも。なんで、なんであんな男を好きになったんだろう。

ままならない心を忘れたくて
その日、紗江子ちゃんと私はいつまでも飲んだ。



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