別れましょう…-2
「あーあぁ。」
「……。」
我ながら間の抜けた声を吐き、麺を力一杯啜る。
私の友人若葉は今とっても悩んでいる。遠距離で会う事はほとんどなくそれでも電話をして交際を続けていたのに、それすらも最近していなく。
「今日の遠足でも、あの風馬から告白まがいな事を受けて。」
走りながら涙する若葉を見て、何事かを聞いて、そして。
「危うくあいつと付き合う所だったわけね。」
「…まぁそんな優しく言われたらキュンと来るかもね。」
確かに、この前のお爺さんの一件で距離が縮まったような気がした。
「付き添ったりタクシーを呼んであげたのは別に振り向いて欲しくてやった訳じゃない所がまた厄介だよね。」
「そうよっ!私欲の為にそういう三文芝居をしたのだらスッパリと諦められたのに。」
本人は大好きな人を護り幸せにしたい、例え自分に決して振り向いてくれなくても。
「あたるとも、未だ電話してないんだって。」
「んもぅ!何やってんのよ二人共!さっさと電話して寄りを戻しなさいってのっ!」
「未だに喧嘩した事を、根に持ってるのかな。」
「でもっ!そんなの電話すりゃー良い事でしょ!」
「まぁ、二人は恋人同士だからね。」
妙な言い方をする蓮に顔を歪ませるけど、私の怒りは未だ治まらず。
「若葉はアイツの事が好きなのっ!夜電話するのが一番の楽しみだって。」
「……でも、向こうも色々と忙しいみたいだよ。」
「それは。」
二人がグズグズしてるもんだから私が直接アイツに電話をしてやった、すると。
「お兄さんとその婚約者さんとの不倫騒動はひとまず静まったようだけど。」
「うん…。」
けどお兄さん最近仕事が忙しくて優華さんもそれは同じで、今までなら仕事の合間に彼女は家の事もやっていたのだけれども。
「お陰であたるが家の事をやる羽目になって。」
「やる羽目つーか本人が好きでやってるだけだけどね。」
優しいアイツの事、悪いと思う兄夫婦に気を使わせないような言葉を掛け家事や買い物に追われているんだろう、これじゃ満足に若葉を電話何か。
「巴はさぁー電話すればどうにかなるって思ってるけど、難しいかもね。」
「何でよ!そりゃー忙しいだろうけど、別に一日中やる事だらけとは。」
「君も案外鈍いんだね、あの優しくて遠慮がちな彼女ならきっと忙しいだろうなって通話を躊躇うんじゃない、増して喧嘩したまま終わってるなら尚更。」
「………。」
私とは正反対な考えにイライラが増してきて。
「じゃー何さっ!諦めろってのっ!?このままでいたらお互い距離が離れて、いずれかは
別れて…。」
「それも、ありじゃない?」
「……はぁっ!?」
声を荒げ、テーブルを思いっきり叩きつけ同時に立ち上がり、連の胸倉を掴む。
「自分が何言ってるか分かってるのっ!?」
「ぼ、暴力はやめてもらって…。」
「だってぇ、二人は付き合ってるのよっ!?それなのに別れる…だなんて。」
胸倉を掴む私の手を軽く払いのけ、衣服を整い椅子に座り直す。
「でも、通話が困難な状況なんでしょう?」
「それは。」
「無理な事を信じて追い続ける事も結構辛いよ。」
「だけど、あの子の恋人は。」
「随分柊さんとあたるにこだわるんだね。」
「こだわってないよっ!だって二人は。」
「それよりもどうしたら彼女が幸せで居られるか…でしょ?」
確かに、このままする勇気もない電話を押し勧めても、それで万が一本当に忙しくて電話に出てもらえない、それどころかまた喧嘩する羽目になったら…。
「あたると柊さんは確かにお似合いのカップルだ、でもそれにこだわって出来もしない
彼との通話、というか付き合いを迫っても彼女が苦しいだけ。」
「……それじゃー。」
「…すっごい、凄く…悲しいけど。」
「蓮。」
その先に言いたい事が不思議と伝わってくる、それならいっそ別れた方が良い…と。
あのいっつもへらへらしてる蓮が暗い表情を見せる、きっとコイツも同じ気持ちで。
「じゃ彼女は恋人も居ないで、それで幸せって。」
「なら別の人に幸せにしてもらえばいいのさ。」
「別の人って、一体……。」
気持ちを落ち着かせる為、お冷を一飲みし、そして。
「まさか…。」
「僕ら、柊さんにはあたる、風馬君は僕らの天敵、…そんな先入観に惑わされていたのかもしれない。」
「本当の、幸せ。」
気力が抜けたかのように実にまずそうに麺を啜る。