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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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別れましょう…-3

「いつもご贔屓にぃー!またのお越しを!」
「あんま無理しゃ駄目よ。」
「はいっ、どうもご心配掛けましたぁ!」

下からお爺ちゃんの活気強い声が小さく耳に入る。

「佐伯君、忙しいんだ。」
「…えぇ、私も何度か電話したけどゆっくり電話出来る状況では…。」

言いたくない事口にするのは何とも辛そうだ。

「だから、その…。」

眉間に皺を寄せ、目線を決して合せず、口ごもり。

だから私はその先を代わりに、と言うか自分の事だから。

「佐伯君と別れろって事?」
「っ!…それは。」

ハッキリ物言い、目を丸くして私を見つめる。

「……。」
「あっでも嫌ならいいのよっ!悪魔で手段の一つ忙しいったって何度も電話すれば。」

あたふたを必死にフォローする巴ちゃん。そんな彼女が見て居られずに。

「!若葉。」
「……。」

包み込むように彼女をぎゅと抱きしめる。

「ごめんね、そしてありがとう。」
「何言ってるのよ!謝るのはこっちだよ、そんな別れろ…だなんて。」
「ううん!私の事を、私の幸せを思ってあえてそう言ってくれたんでしょ?…私が佐伯君の事をどれだけ好きなのを知った上で。」
「それじゃー。」
「……。」

私は涙が零れそうなのを堪え、そしてゆっくりと首を縦に振る。

「若葉、ゴメンね。」
「だから謝らないでって、私も…薄々気づいてたから。」

そして私はケータイを手に取った、思ったよりも躊躇いもなくボタンを押せた。

きっと、この苦しみからいち早く開放されたいから、でも別れる何て考えはまるで持つ事も出来ず、そこに巴ちゃん達が気づかせてくれて、背中を押してくれて。

「…もしもし。」

彼の声、元気はない。

「あっ、佐伯君…御免なさい忙しい時に。」
「そうだね、兄貴を迎えに行かないと、それに優華さんから頼まれたモン買わないと。」

忙しいのは本当のようだ、彼の事を思い、そのまま電話を切る所だけど、ここで引っ込んだらまた苦しいだけだ。

横で目が「頑張れ!」と訴えている巴ちゃんに勇気を貰い、そのまま通話を押し通す。

「私は貴方の事が大好きです、でも最近の貴方とっても忙しい。」
「それは…。」
「このまま貴方との交際を続けていても苦しいです、それは佐伯君にも言える事。」
「そう、だね…。」

否定しない、ホッとする反面少し悲しい。

「だから、……ううっ、私は、私は…貴方との。」

ヤダ、声が、出ない…ここはちゃんと言わなくちゃいけないのに、すると。

「ゴメン。」

彼からの謝罪の言葉。

「佐伯、君?」
「…俺、最低だよな、君が嫌な想いして俺の幸せを考え、こっちに行くよう背中押してくれて、遠距離で電話をしようって、そしていつか迎えに行くって言ったのに…。」
「……。」

電話越しから聞こえる彼の涙声。

「傷つけてゴメン、君にそんな話を切り出すまで苦しませて。」
「そんなっ!悪いのは忙しいっ…。」

これ以上言ったらまた優華さん達に喧嘩吹っかける事と変わらない、家事を辞めろとも言えない、彼が家族思いの優しい人だって事は誰よりも理解してる。

「いいよっ、俺たち別れよう。」
「……。」

スパっと言い出す彼、覚悟は出来ていたつもりなのに彼の声で言われると、目の前が真っ暗になった気分で。

それでも私は最後まで頑張り…、震える手でケータイを持ちなおし。

「…うん、今までありがとう!向こうでも幸せにね。」
「……あぁっ!君もね…。」

………。

こうして彼との通話も関係もキレイさっぱりに音もなく切れた。

「……巴、ちゃん。」

泣きそうな私に彼女は何を言葉も添える事も無くぎゅと強く抱きしめてくれて。

「…うっひっく……、巴ちゃん、私、私。」
「何も言うなっ!…アンタは良く頑張ったっ!」
「うっうううっ!」

これで良いんだ、これで…。


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