離れていく二人-8
医師からの説明を受け、病院を後にした私達、家まではタクシーを拾い帰った、その時も
ずっと風馬君が付いていてくれた、気力のない私に代わってほとんどリードしてくれて。
「じゃ僕はここで。」
自宅前に到着し、家の中には巴ちゃんが居て、タクシーを見かけてすかさず私の方へ駆け寄り。
「風馬君!」
「うん?」
「今日は本当にありがとう!」
「…いつもの君に戻って僕も嬉しいよ!」
そうほほ笑み、彼も自分の家に戻った。
小さくなっていく彼を乗せたタクシーに目をやる私と巴ちゃん。
「ゴメンねっ!若葉、本当にゴメン!」
自室に案内し、力一杯謝ってきた彼女、練習が終わって自分に電話があった事に気づき
掛けなおし、そこで初めて私の危機を知り…。
「ううん、試合あったんでしょ?それなのに…。」
「…でもまさかアイツが来るなんて。」
私が淹れたお茶を一飲みし、若干の敵意を抱きそう言い放つ。
「彼、とっても私に良くしてくれたの、暖かい飲み物を買ってくれたり、タクシーだって拾ってくれて…。」
「若葉…。」
「勿論、分かってるよ!?私には。」
「分かってる…、来たのがあたるだったら良かったのにね。」
「ホントだよ、私に対して頼もしくそして気遣ってくれる姿に危うく。」
「……。」
もはや予定していた佐伯君との通話何てどこ吹く風か、ただ先ほどまでのドキドキ感は
治まってきて本当に良かった。
「にしても良かったね、お爺さん…早くも明日の夜には退院して戻ってくるみたいで。」
「うん、本当に…、ありがとうね態々こんな時間に。」
自宅に戻ったら散らばった林檎も片付いていて、時計の大きい針も10を刺していて。
「いいって事よっ!さっき親に連絡入れて今夜は泊まる事にしたから。」
「やっぱり、悪いな…。」
「今日一日だけだからさ、それに大好きな親友が一人で家に居るかと思うとおちおち寝れやしないし、こうして若葉と一緒に寝れて良かったよ。」
「巴、ちゃん…。」
高ぶる感情が抑えられない、そして。
「巴ちゃん!本当にありがとうっ!だぁーい好きだよっ!」
「あっははははぁっ私もだぁー!」
お互い強く抱き合った。