離れていく二人-6
病室は私が思ったより騒がしくなく静かだった、うるさかったら何処か気が散るし、でも
かと言ってこう人気が少ないとそれはそれで気分が沈む。やっぱ時間が時間だからたまに看護師や医師、それにパジャマ姿の患者が通りすがる程度。
手術中…の文字が赤く光り、私はロビーで小刻みに震えていた、命に別条がないとはいえ
今後の事が気になる、手術が成功してもお店を続けられるかどうか、もしかしたらこのままずっと入院して、死ぬまで…、そんな事した青果店は?私、どうなっちゃうの?
唯一の肉親、私の母若菜も未だ行方不明、また弱気になってしまった。
誰か、助けて…独りに、しないで…。
私はベランダに出て、すかさずケータイを取り出し、巴ちゃんに掛ける、しかし何度コールしても出ず。そういやこの後バレーの練習試合があるんだっけ。
彼女が出ないことに力が一層に抜け、別の人に掛けようとする、画面には「佐伯君」と
…でも、不思議と指が動かず、結局何もこの嫌な時間に対して対抗も出来ず、ボロ人形のように虚しく椅子に腰を掛ける。
お爺ちゃん、何で。
お願い、無事で居て…。
恐い、誰か…助けて。
独りにしないで。
……
佐伯、君。
青森に居て今から飛んでいく何て無理なのは分かってる。
でも、でもっ!
私の為に、傍にいてよっ!
雲を掴むかの如く無謀な願い、それでもっ!
頭に浮かぶのは彼の不器用でも明るくて暖かい太陽のような私の大好きな彼の笑顔。
彼は、今は…ここには。
人生とは残酷だ、何も前触れなく情け容赦なく。
胸の苦しみが静まらず無意味にテーブルに目をやる。すると向こうから走る足音が。
まさか、頭じゃ分かっていても期待せずにはいられず、顔を上げる。
「佐伯君っ!…あっ。」
そこにいたのは彼、ではなく。
「若葉、ちゃん。」
「風馬…君?。」