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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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立ち込める暗雲-2

「へぇー、良かったな蓮も巴も一緒で…。」
「はいっ!それと遠足がもうじき控えるのですが、それの議長になったんです。」
「積極的になったな、柊さん。」
「はいっ!皆さんのお陰ですっ!」

静がに満月が見つめる中、佐伯君との通話、最近一番の楽しみだ。

「佐伯君の方はどうですか?少しは私が教授した料理や買い出しに掃除家事全般の知識と経験を役立ててますか?」

私もお節介になったものだ、つい向こうでの生活が気になってしまう。

「あまりお兄さんや優華さんにご迷惑は掛けてませんか?どうせだったら札幌で得た家事のテクニックを彼らの為に役立てるのも良いですよ。」
「あぁ勿論だとも、というか兄貴も優華さんも結構俺に気使ってるんだよな、何か手伝おうとしても「いいのいいのっ!」って。」

向こうでも裕福に楽しくやってる感じが頭に浮かび、幸せな気持ちになる。

「まぁ、最近兄貴は忙しくてほとんど家に帰らないし、優華さんもホントは兄貴と同じくらい忙しいんだろうけど俺の面倒を見る為に、仕事終わる時間を早めてくれて。」
「二人共、君の為に色々考えくれてるんですね。」
「あぁ、まぁ。」
「?どうしました。」
「いや、二人って要するに共働きだろ…。」
「そりゃそうですね。」
「…時々優華さんが嘆くんだ、「彼に会えない…」って。」
「え…。」
「たまに帰って来ても疲れてろくに会話もしないらしくて…。」

え、何…この雲行きが怪しい感じ。

「で、でも…結婚、したばっかり何ですよね?」
「まぁそうだけど。」
「なら、ちょっと疲れただけど別に。」
「そうだな…。」
「何?まだ何かあるなら言って。」
「兄貴の奴、新しい腕時計を付けてたんだ。」
「まぁ、優華さんからの。」
「と思うだろ!?俺も最初はそう思いたかったんだ!」

急に声を張り裂ける彼、何?。さっきまでの楽しい通話が嘘みたいに消え失せて。

「な、なら自分で買ったんだよ!」

私もそして彼もある嫌な可能性を避け、妻に内緒で自分で腕時計を買う、何て苦し紛れの
気休めを言い。

「兄貴もそう言ったんだ、けど優華さんは「嘘っ!別の女からプレセントしてもらったんでしょ!?」って怒り心頭で…、軽い修羅場に。」
「……。」

嘘、あの優しい優華さんと穏やかなお兄さんに限って。

「俺、…何だか怖いよ…、折角あの親父から逃れて君に強く勧められて兄貴の居る青森へ行ってようやく人並の幸せな生活を送れるとおもったのに…。」
「佐伯、君。」
「転校までして、何より君と別れてまでしたってのに、これじゃー。」

電話越しに耳にする彼の弱弱しい声、それは不安と恐怖に満ち溢れているようにも見える

折角楽しく遠距離で彼との会話を楽しんでいたのに、何で、こんな。

「なーんてなっ!」
「え?」
「でもきっと優華さんの勘違いだと思う、やっぱ女ってこういうのに自意識過剰な所って
あるだろ?それだけ兄貴の事が好きって事だよ。」
「……。」

気弱な声から一気に活発的なトーンで語りだし。

「兄貴も兄貴でそういう所があるんだよ、子供の頃も俺に何の相談もなく急に所属してたバレー団を辞めたり、俺がその時どんなにショックだったか。」
「……。」

さっきから声が出ない。

「だから腕時計も自分で勝手に買ったんだよ、その日は丁度給料日だったし、ったくそんな事すりゃ優華さんが変な誤解するってーの…、何て俺も人の事言えないか、やれやれ兄弟揃って鈍感って訳か。」

明るい口調で話し出す彼、それはまるで私が心配するのを察したかのように。

「…本当に、大丈夫…何でしょうか?」

もしもお兄さんが優華さんを裏切っていわゆる不倫…をしていたら、佐伯君の今居る家庭もぎくしゃくして、そして。

駄目だ、不安という名の黒いガスが容赦なく建物を覆いつくすように私の脳内が…。

「……さん。」
「ううっ。」
「………さんっ!」
「もしかして。」
「柊さんってばぁ!聞こえてる!?」
「っ!!」

気が動転して彼の声が聞こえなかった。

「俺なら大丈夫だって!」
「でも、でもっ!」

駄目だ、泣きそうな声を隠せない。

「折角楽しく会話をしてたのに、こんな話、するんじゃなかった…ホント、ゴメン。」
「佐伯、君。」
「君だって見ただろ?3月に青森に君と行った時、二人の仲の良さを。」
「え、えぇ。」

どうにか声が出せた。確かにあの時の優華さんはとても優しかった、この前電話で相談を
受けた時もとっても幸せそうな声で。

「だから、きっと誤解だよ、兄貴にそんな度胸があるとも思えないし。」
「……、そ、そうですね。」

駄目だ、明るく振舞わないと…私が悲しんだら彼だって…

「夫婦になればそんな事の一つや二つ良くありますよねっ!きっと後になって良い笑い話になりますよねっ!」
「柊さん…、そうだよ、大した事じゃないから、だからもう一度言うよ。」


    俺なら大丈夫!向こうで大好きな兄貴たちと幸せにやってるからっ!


電話越しから聞こえる力強い一言。

「すぐに誤解は解けると思う、その時はまた電話するから。」
「……。」
「その時はまた楽しく会話、いや通話しようなっ!」
「いよ…。」
「え?」
「絶対よっ!約束だからぁっ!」

心の叫びを言い放つ。

「勿論、約束する。」

こうして電話は途切れた、通話が途切れてこんなにも寂しいと感じた事は今までなかった。




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