彼の居場所-6
閑静な美術館、お客も少なく年配の夫婦が目立つ。私は所詮部外者なのでちょっと検挙に
一歩引いて、3人を遠くから見つめる感じにする。
「わぁー凄い見ろーあたる、この背景幻想的だろ。」
「ふーん、そうかぁー。」
「お前はぁー、相変わらずこういうの興味ないんだから。」
「しゃーねーだろ、俺は体育系で兄貴は文系なんだから。」
「家でもピコピコばっかしてんじゃねーの?」
「してねーよ、余った時間くらいに。」
「ピコピコ?」
「ピコピコ。」
ピコピコ=GAME♪
これが兄弟の普段の会話なのでしょうか、ホント自然体で伸び伸びしてる。
「まぁ、この絵素敵…、花がキレイ。」
「ほんとだー、でも。」
「え?」
「この絵より君の方がキレイだよ。」
……兄弟揃ってお世辞が下手ね。
「向こうに珍しい化石があるぞ。」
「へぇー、美術館なのに?」
「美術館だからって絵ばっかじゃないさ、ほれあたる折角だから観なよ。」
「あぁ!」
皆でこういう所行くの楽しい、最近私は楽しい…に出会ってる、それは彼のお陰。
「……。」
「?」
不意に一之瀬さんの横顔が目についた、それは少し寂しそうに見えた。
「若葉ちゃーん、どうしたの?行きましょう!」
「そうだよ、柊さんも観なよこれ。」
「あっ、はーい!」
一之瀬さん…。