好きの散弾銃、防御壁無し。-1
「好きなんだけど」
「……はい?」
朝のホームで、言ってやった。相手はポカンとした顔で思考が回ってない様子。だからもう一度言ってやる。いや、何度だって言ってやる。
「あんたのこと、好きっていったんだけど」
「はあ」
相手は気のない返事、と言うかまじまじと俺を見ている。
なんだよ、制服も髪型もいつもより時間をかけた仕上がりに文句はないだろ。
絶世の美少年、とまではいかないがかなりイケメンだと自負してる。色白だし、目は大きいし、小顔でスタイルも上々。
それ以上何がある?こんな可愛い17歳に告られて、何が不満?
「早くOKしろよ」
「……OKが前提?」
「はあ?この俺を振るって言うの?」
「いや、つか、」
「なんだよ?なんか文句あんの?」
ずい、と近付いて早く答えを促す。
「俺だって一応緊張してるわけで、生まれて初めての告白なんだけど?有り難く思えよ。そして早く答えろ」
「……あー、別にいいけど」
「別に?別にってなんだよ。そんな返事の仕方ってある?あんた今まで国語習ったことないわけ?」
「……わかった。付き合うから黙って」
ふぅ、と溜め息をついてそいつは、もう一度俺を上から下まで一瞥する。
んだよ、なんか文句あんのかコラ。
「お前、どう見ても男だよな」
「あんだよ、男に決まってんだろ。こんなイケメンの女がいたら世も末だっつーの」
はあ、とまた溜め息を吐く。
マジで、ホントにあんた溜め息つくとかありえねーし。文句あんなら口に出せっつーの。俺は可愛い顔してても心はそんな広くねーんだよ。
解ってんのか、コラ。
「オレも男だけど?」
「あったりめーだろ、そんなん見たら分かるわ」
男が男に恋しちゃいけねーのかよ。そんな法律ねーよ。そりゃ、朝のホームで勢い良くイケメンが可愛いイケメンに告られる、っつーのが非日常的だとしても誰も悪党はいねーんだよ。
寧ろ、この俺の勇気を讃えて欲しいね。
「お前、ホモなの?」
「はあ?違うし。つか、あんたのこと好きだっつたんだけど。生まれて初めて好きになったのが、あんただってだけで決めつけんなよ。解ってんのか、コラ」
「お前良く喋るな。すげーわ」
「はあ?」
なんだ、こいつは。俺の告白をまるごとスルーか。聞いてんのか聞いてねーのかさっぱりわかんねーし。
「おい、あんたいい加減にしろよ?こっちはあんたのこと好きだっつって」
「可愛い顔してんのに口悪いな」
「今そんな話してねーから」
「あー、そうかもね。オレ大概話し聞いてねえから」
「聞けよ!一番大事なとこだから!ふざけんなコラ」
ちくしょー、見た目に騙された、気がする。そりゃ、喋ったこと無いしガチで一目惚れしただけだけど。
こんなにちゃらんぽらんだなんて、想像すらしてなかった。
つか、俺何回言えば良いの?
どうしたら伝わるんだよ、俺の気持ち。
俺あと何回好きだって言えば良いの?