好きの散弾銃、防御壁無し。-3
数人がこちらを振り返った気がするが、どうでもいい。朝のラッシュはとうに過ぎ、電車は何本も通り過ぎていった。遅刻はお互い確定で、それでもまだこうして告白は続いているわけで。
え、今気付いた。
こいつ、俺の告白に、そう言えば、別にいい、とか、付き合うから、とか、言ったよな。
言ったよな?
マジかよ!言ってたよ!自問自答で地団駄ふんじまうよ!
「いや、さっきも言ったけど付き合うって。好きじゃねーけど嫌いなタイプじゃないし。流石に男とは初めてだけど」
「お、おう」
かあっ、と顔が火照る。俺遅すぎだから!なんだよ、全然締まらねー!
「……真っ赤。」
「うっせー」
にやっと唇だけ笑うとか、もう俺をどれだけ翻弄したら気が済むんだよ!
マジで!あー、もう!
「俺は好きで好きでどーしよーもなかったんだよ!あんたの気持ちなんか今から俺が努力するの前提だし。とりあえずあんたは、俺が好きだっつーのを受け止めとけ!」
「可愛いのに随分男前だなー」
うるせーうるせーうるせー!腹ん中で叫んでやる。だって言える状態じゃないし。
顔は火照るし、心臓は煩いし、マジ、今目が合ったら確実に死ぬわ!
「照れてやんの。……あまね?」
うあああああ!
急に名前呼ぶな!
そして顔を覗き込むな!
あまね、て!
うあああああ!
「めっちゃ顔赤い。きょろきょろして…こっち見ろよ」
「う、うっせー。黙れ」
「これがツンデレってやつ?」
「知るか!」
ちらっと目を合わせれば、素っ気ない顔をしながら口角を上げている。何この余裕。ふざけんじゃねーよ、コラ。
俺ばっかりあたふたして、撃ち抜かれて、ドキドキして早死にかよ!
この男にはあれだけ好きを散弾しても掠りもしないとか、マジどんな心臓してんだよ。ちったぁ動揺しろ!
あれこれぶつぶつ心で騒いでいると、なあ、と声が降ってきた。
「あまね、学校どうする?もう大分遅刻だけど」
「それどころじゃねーよ」
「オレもなんかそれどころじゃなくなってきたなー」
「は?」
んー、と両手を伸ばして背伸びをする姿。それどころじゃない?
この平然としてるあんたが?
はあ?
「あまねのせい。心臓突き抜けた」
「はあ?」
何いってんの、こいつは。
面白そうな顔して。俺は全く笑えねーっつの。