夢想非現実-2
結婚して十年、三つ年下の妻にそそられることはめっきり減っていた。
裸体に近い風呂あがりや、就寝前の下着姿などを目にしても、なんの関心も持てなくなってきていたのだ。
それだけに質素な木綿の下着を盗み見ただけで、己の陰茎が異常な昂りをみせ、僅かに扱いただけで激しい射精への欲求を感じたことに驚きを感じていた。
電車が大きなカーブにさしかかると、揺れにそなえ両脚の開き加減に変化が現れる。
太腿に緊張がはしり少女の中心を包み隠す布地は、ヨレが伸び張り付くように露骨な線を浮かび上がらせる。
《“おとこ”を知らぬ少女の清廉な色香》
千章の脳裏には、不意にそんな言葉が浮かんでいた。
セックスの経験はおろか、フェラチオの意味すら知らぬであろう少女。
おそらく、いや間違いなく、“おとこ”を知り十分咥え込んだ女の下着姿では味わうことの出来ぬ感慨、悦び。
画面中央に映りこむクロッチの向こう側、まだ見ぬ浅いスリットへと滾る想いが増していく。
同時に薄くグロスが引かれた少女の口元が思い出される。
《理想の少女を誘拐、監禁、レイプ、そして…… 己の陰茎へと傅かせる》
まるで三流A.V.のようなシナリオ、荒唐無稽とも思える欲望。
その欲望を叶える為に、ひとりの男が淫魔へと変わろうとしていた。
その欲望を叶える為に……
千章は初めての盗撮から数週後、一通の封書を満員電車の混雑に紛れ、磯崎恵利子のサイドバックへと挿し入れる。
封書の中には数枚のプリント画像と便箋が入っていた。
便箋に記された内容は……
磯崎恵利子様
貴女の通学時における電車内で、制服スカートの中を繰り返し盗撮しました。
なお、盗撮は静止画ではなく動画で、乗車前の貴女の姿からスカート内盗撮、降車して改札を抜けるまで記録してあります。
もちろん貴女と面識のある者が、これらを目にすれば盗撮されているのが誰であるか十分認識出来るでしょう。
盗撮動画は複数あり、まずは証拠として一週間分、動画からプリントアウトした物を同封します。
女性の貴女には理解し難いでしょうが、こういった物は需要があり場合によっては、動画サイトへの投稿も考えております。
貴女自身の羞恥はもちろんですが、ご家族、特に双子の妹さんへの影響を十分考慮し慎重な対応をお勧めします。
まずは明日、いつもの時間、車両に乗車し抵抗しない事を要求します。
なお、こちらの要求が受け入れられない場合は、即、前述した動画サイトへの投稿を実行します。