幸田美咲と大木太郎-2
浴室の前で、その嬌声を聞いていた中年の女にはもう我慢の限界だった。
「いい加減にしなさい!さっきから待って貰ってるのよ。早く出てきなさい!」
その怒声に、若い女は白けた表情を浮かべ、ジョンは両手を上に向けて肩を竦めた。
「わかった、わかった。そんなに怒鳴らないでよ。せっかく遠くから来てくれたジョンが吃驚してるじゃないの。それに娘の楽しみを奪わないでよね〜」
「何が『楽しみ』よ!盛りのついた雌猫みたいに」
娘の口応えに、母親は罵声で答えた。昨晩から散々娘の嬌声を聞かされていたので辟易していたのだ。
「うふふ、そんなに怒るなんて、若しかしてお母さんたら欲求不満?」
「な、なんてことを言うの!」
母親の怒りは頂点に達した。
「怒らない、怒らない。今出るからバスタオル取って」
そう言った娘は、ニヤリと笑うと、成り行きを見守っていたジョンに何かを耳打ちをした。
「Ok〜Ok〜、I will .マカセナサ〜イ」
ジョンは娘の言葉にニヤリと笑って同意した。
「何してるの?早くしなさ…」
催促の言葉を上げる母親の声が終わらない内に、娘はガチャリと扉を開けて浴室からスルリと出てきた。娘は全裸を気にする風もなく、文句を言いたげな母親の手からバスタオルを受け取ると、火照った女体を拭った。拭い終わったバスタオルを母親に投げると、棚に置かれていたバスローブを手に取って羽織った。
「まさか、そのままで行くの?」
「別にいいじゃない。自分の父親なんだから」
娘はそう答えると、母親に背中を向けて脱衣室を後にした。
母親が脱衣室を出て行く娘の後を慌てて追おうとした。
「ちょ、ちょっと待ちなさ…、うっ、うううっ!」
しかし、後ろから伸びてきた手に口を塞がれて抱き止められた。母親の苦しげな声を聞いて、娘は後ろを振り返った。
「うふふ、ジョンに可愛がってもらって、欲求不満を解消しなさいよ」
「むうっ!ううっ!ううう」
体を捩らせて抵抗したが、大柄の白人を相手に全く無駄な足掻きだった。
「ミサキノ命令ネ。ママサン、おまんこシマショウ」
「あはは、イってらっしゃい」
目を見開いた母親が、ジョンに抱えられて寝室に連れ去られる様子を、娘は楽しげに見ていた。
「おまたせ〜」
居間に入った娘は、待っていた父親に向かって、悪びれる風も無く、しれっとして言った。浴室から聞こえてくる淫らな声を聞いていた父親は、苦虫を潰したような顔をしていた。そんな父親の様子に構う事無く、娘は向かい合わせるようにソファに腰を下ろした。
「で、何の用なの?」
「『何の用』だと?わかってるだろ!どうして学校を辞めたんだ!」
「何だ、そのこと?」
「『何だ』とは何だ!お前の尻拭いにどれほど苦労したのかわかってるのか!こんなに早く帰ってきやがって」
娘の嬌声を聞きながら散々待たされた父親、大木太郎は、久し振りに顔を出した妾の家で、妾に産ませた娘、幸田美咲に対して苦々しげに声を荒げた。
「あはは、悪い悪い。でも、あんな堅苦しいところに追いやったあんたも悪いんだよ。それに呼び戻したのはあんたじゃないの」
美咲を大人しくさせるために大木が留学先で手配した学校は、規律を重んじる全寮制の学校だった。しかし、当の美咲はその堅苦しさに我慢ができず、教師と揉めて対校処分になってしまった。
「それは、お前が学校を止めてフラフラしてたからじゃないか!それに、あんなワケのわからん男を連れ帰りやがって」
「ジョンのこと?向こうでしつこく付きまとわれたから、ついつい『日本に来たらセックスさせてあげる』って言っちゃったのよ。まさか昨日ほんとに来るとわね〜。あたしも吃驚しちゃったわ。あはは」
美咲が軽く笑った途端、その男に犯される母親の声が居間に届いてきた。