憂鬱な旅館-4
「んまそうーな、刺身!」
テーブルに運ばれてきた旅館名物の刺身料理、それはキラキラと輝いているようにも見え
旅費の関係で一番安いのにしたのだが物足りなさは一切感じず。
「ほほう!醤油がよく効いてるな、見た目も良い感じだしっ!」
楽しそうに箸が進む彼、私はそんな彼を穏やかな目で見つめ。
「ん?どうした、君も食べなよ、これ本当に美味しいよ!」
「えっ!あーうん、そうだねっ!」
彼に促され私も箸を取る。
大好きな人との食事は本当ならとても楽しい筈、でも状況が状況では喉に通る物も通らなくて。
「……。」
不意に隣で食事をしている親子を見つめる彼。
佐伯、君。
その横顔は何処か寂し気で…。
やっぱり彼には、幸せになって欲しい。
「手ぇ、止まってるぞ柊さん。」
「え、あーそうですね。」
私のグラスが空なのに気づき、すかさず水を注ぎ、テーブルに置いた途端。
「せっかくだから楽しもうや!」
「……はい。」
彼は、どう思っているんだろう…