unripe fruits-10
そして、俺達はどちらからともなく唇を交わし始めた。
桜井が嫌悪していた、口の周りが互いの唾液で汚れるような汚いキス。
だけど、今度は桜井も積極的に舌を絡めてくる。
獣のように一頻り求め合ってからほんの少し顔を離すと、なんだかきまりが悪そうに桜井がはにかんだ。
「……何笑ってんの」
「さっき、あのエロDVDを気持ち悪いって言っちゃったけど……、好きな人とだったら気持ち悪いなんて思わないんだなって」
その柔らかい微笑みに、なんだかこっちまで優しい気持ちになる。
桜井のおでこに自分のそれをくっつけてクスッと笑いながら、
「桜井……、俺達付き合おうか」
と、言葉にした。
驚きで桜井の瞳が丸くなる。
そんな、『何言ってんの?』みたいな顔されるとかえって気まずいんですけど。
苦笑いになった俺は、咳払いをしてから、まっすぐ彼女の瞳を見つめる。
「俺は恋とか愛とかまだよく知らないガキだ。でも、桜井が好きって言ってくれてから、心臓がずっとバクバクいってる」
「野々村……」
「正直、桜井のことを今まで意識したことなかったけど、俺、もっと桜井を知りたいと思った。いつもの喧嘩してばかりの桜井じゃなくて、さっきの可愛い姿をもっと見たいって思った」
「……うん」
「桜井を知りたいって気持ちが、好きに繋がるなら、まずは付き合う形から入ってみたいんだけど……これってワガママかな」
恋愛感情としての“好き”は本当にわからない。
だけど、こうやってキスをして、抱き締めて、身体に触れたことで、元々抱いていたウザいという気持ちは不思議と消えていた。
現金な男と言われたらそれまでだけど、でも、正直に話すことで桜井に誠意を見せたつもりではある。
すると、桜井は恐る恐る俺の身体に腕をまわしてきた。
「それで、充分」
「桜井……」
「あたしは、野々村さえよければ彼女になりたい」
互いの裸の胸がしっかり重なって、桜井の鼓動が肌越しに伝わってくる。
トクトクと、速く脈打つ鼓動と、俺のそれが重なって。
お互いこんなにもドキドキしていたんだ、と思うと自然と顔がニヤけてきた。
しっかり抱き合う俺達の、二人の鼓動が一つになる。
そして、どちらからともなく唇をまた重ね合わせた。