止まらない魔法の指先-3
「んやぁっ ダメっ あ、いやっ 見ないで…… はあぁ……んっ」
クリトリスを中心にして、言い知れぬ快楽が何度も全身へと駆け巡る。
手先が冷たくなって痺れるような感覚。私ははしたなく両脚を拡げたまま、未知の刺激に酔いしれながら、しばらくその余韻に何度もその身を震わせていた。
「どうだ?気持ち良くなれたか?」
耳元で囁く裕太の低い声。私はうつむき黙ったまま静かにコクリと頷いた。
なんだろう、いつも聞いてる筈なのに、裕太の声がやたらと心地よく思えて不思議と落ち着く。
「そのまま横になって少し休みな?」
そう言って私の体を優しくベッドに横たわらせると、いつものようにタオルで体を拭いてくれる裕太。
体を拭いてもらうなんていつものことなのに、敏感になっているからか、裕太の手が触れるだけで体がビクビクと震えちゃって恥ずかしい。
私はゆっくりと体を起こしあげ、いそいそとシャツを着ると、捲れたスカートを戻しながら、徐々に落ち着きを取り戻しはじめた。
「な、なんか……ごめん、ね?」
「ばーか!なに謝ってんだよ?」
「だって……」
両肩を落としたまま、思わず深い溜息をついてしまう私。
やってしまった。恐れていた通り、あまりの気持ちよさに自制が効かなくなってしまった。
幼馴染みなのに、付き合っているわけでもないのに、自分の指だけでは飽きたらず、事もあろうに裕太にそれをお願いしてしまうだなんて。
私はいまさらながらに恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいになってしまい、耳まで真っ赤にしながら、思わず両手で顔を覆い隠してしまった。
そんな私を見て裕太は何を思ったのか、突然、背後から私の肩を抱き締めるや、小声でこんな言葉を囁いてきた。
「次はもっと気持ちよくしてやるからな?覚悟しておけよ?」
その言葉に私は思わず顔をあげると、振り返り、裕太の顔を見つめながら、声にならない言葉でひとり、口をぱくぱくさせた。
ただでさえ気持ち良くて、まさかの絶頂にまで導かれたと言うのに、もっと気持ち良くだなんてそんなの想像もつかない。これ以上だなんて、つまりはそれって――。
私はまたよからぬ想像をしてしまい、再び体を熱く火照らせた。
「ま、また…… してくれるの?」
口を突いて出た私の言葉に、裕太がにっこりと笑う。
「なんだ、もう必要ないのか?」
「そ、そんな事ないっ」
「気持ち良くなりたいんだろ?」
「う、うんっ」
「ちなみにそれはどっちの意味で?」
「……え?ば、バカ!意地悪っ!」
人の気も知らないで、いや、もはや知ってしまったクセに、なのにそんな言葉を投げかけるなんて反則だ。
「んじゃその…… 帰る、ね?」
「おう、気をつけてな」
私はその場に立ち上がると、恥ずかしくてありがとうの一言も言えないままに、どこか逃げるように裕太の部屋を後にした。
ほぐされた肉体、いつにも増して満たされた身体、今日こそはぐっすり眠れる筈なのに、気持ちが昂ぶってどうにも落ち着かない。
なんとなく気づいてしまった自分の気持ち。はしたない欲求が解消されるや、ようやくそれに気づくだなんて、愚かしいにもほどがある。
あのまま裕太の横で眠りたかったな。
私は静かに目を閉じると、下着の中に手を滑らせ、指先でクリトリスを弄りながら、裕太の指の動きを反芻した。
満たされない欲求を解消するだけが自慰行為じゃない。切なさを紛らわせるがためにするのもまたそれなのだと、この日私は初めて知った。