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喜びより悦びを求めて
【ラブコメ 官能小説】

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みんなの裕太-1

私の幼馴染み裕太は、中肉中背でスポーツはからきし、勉強なんてもってのほかなのに、やたらと女生徒からの人気が高い。

理由は明白、唯一無二とも言える特技のマッサージがプロ顔負け、尋常じゃないくらい上手だからに他ならない。

「ねえ裕太?肩、揉んでよ?」

休み時間、相も変わらずクラスの女子にマッサージをせがまれる裕太。

「あ?何で俺がそんなこと……」
「あれあれ?数学のノート、今日こそは提出しなきゃじゃないのかな?」

たかがノート提出、されどサボってばかりで進級も危うい裕太にとってそれは死活問題。

だから、そこのところをちょっとほのめかしてやれば、やむなしとばかりに要求をのまざる得ないのは、もはやクラスの誰もが知る周知の事実だ。

「ったく、わーったよ!さっさとそこに座りやがれ!」
「へへ、やったぁ!」

喜々として椅子に腰掛け背中を向ける女生徒。裕太は渋々ながらも両手でその肩を優しく揉みはじめた。

「あんっ あ、やぁ…… そこっ んっ やっぱ気持ちいい……っ」
「バカっ!変な声出してんじゃねぇ」

嬌声にも似た艶めかしい声。恍惚の表情を浮かべる女生徒を、なんともまた羨ましげに眺める他の女生徒たち。

曲がりなりにも学舎たる教室で、そんないかがわしい声をあげていたら、訝しがられて注意する輩のひとりやふたり出てきそうなものだけれど……

「あ、んやっ んっ はあぁ……っ」

みんな裕太のマッサージの気持ちよさを知っているからか、次は私と言わんばかりに黙ったまま、潤んだ瞳でそれを傍観している。

(はぁ… いいなぁ……)

その様子を遠巻きに見つめながら、羨ましげに溜息をつく私。

裕太のマッサージが気持ちいいだなんて、私にしてみれば今更の話。

幼い頃は私だけがその恩恵を受けていて、それこそ独り占めしていた筈なのに、いつからかその腕前が風の噂に知れ渡るや、裕太は引く手あまた。

気がつけば抜け駆け禁止だなんて暗黙のルールがたてられてしまうほどに、幼馴染みの裕太は、誰のものでもないみんなの裕太になってしまっていた。

私だって裕太にマッサージしてもらいたい。ノートくらい、いつでも私が見せてあげられるのに。

でも、ただでさえ幼馴染みというだけで羨まれているから、抜け駆けだと言われるのが怖くて、最近ではマッサージされるのはもとより、声を掛ける事さえも躊躇ってしまっている。

キーンコーンカーンコーン

そうこうしているウチに、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

満足げながらも、どこかまだ物足りなさそうな女生徒を、羨ましそうに見つめる他の女生徒たちと――私。

鈍感なのか気づいてさえいないのか、そんな視線などお構いなしに、せっせと借りたノートを写しはじめる裕太。

その下心をまるで感じさせない素っ気なさがまた、人気の秘訣なのかもしれない。


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