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『やっ、ああっ、あんっ……』
脚を開いた状態で男がそこに顔を埋めた。
岬はるかの声が一際高くなる。
ジュルジュルと唾液と愛液が、混ざり合う音。泣きそうな顔で甘く喘ぐ岬はるか。舌でヴァギナを念入りに舐める男。
声の感じで、岬はるかが本当に気持ち良さそうなのがわかるから、それがやけに興奮する。
こんな恥ずかしいことされているのに、あんなに乱れて……。
同じことをしてみたくなって、乾いた唇を舌でなぞる。
あんな風に女が乱れる所を見てみたい……!
そんな過激なシーンを食い入るように観ていると、横からゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえた。
「あ……」
こっそり横目で桜井を窺えば、先ほどの嫌悪感いっぱいの表情はどこにもなかったのである。
半開きの唇から時折大きく息を吐くその様子は、切なそうにも見えて、ガキ臭いイチゴのヘアゴムだけが妙にアンバランスだった。
「……な、何」
気付かぬ内に、俺は桜井の横顔に見入っていたらしく、その視線に気付いた彼女が、少し驚いたようにこちらを見た。
真っ赤な顔に潤んだ瞳がやけに欲情的。
ダサいはずの桜井なのに、こんな表情もするんだと意識をすれば、勝手に身体が熱くなってくる。
「……どうなんだよ、桜井」
「だ、だから何がよ」
「その……、これ観て興奮してきたかってことだよ」
ハッキリ言って俺の身体はすっかり反応しきっている。
その原因の大半はDVDのせいであるけれど、プラスアルファで桜井のいつもと違う様子も少なからず影響していた。
すぐ側に生身の女がいる、その事実が理性を打ち負かしそうで。
もはや理性という名の砂上の楼閣は、サラサラと崩れ落ちる寸前だった。
だが、
「す、するわけないじゃん。気持ち悪いって思いながら観てるだけよ」
と、相変わらず否定する。
だけどその語尾の弱さは、いつもの勝気な桜井の口調ではない。
忙しなく動き回る瞳は、明らかに動揺していて、決してこちらを見ようとしない。
本心は別にあると睨んだ俺は、そっと身体をずり寄せ、桜井の側へ移動した。
桜井がヒッと息を呑んで、怯えたように俯く。
いつもの俺なら、絶対こんなことはしない。
だけど、画面の中で乱れる岬はるかが、そして子猫のように震えて身を小さくしている桜井の姿が、寄せては返す波となって、砂上の楼閣に迫っていた。