新しい君に-7
(7)
翌週の土曜日の夜、俺は純子を部屋に迎えた。研修が終わるのが2時だから、
「夕方行ってお掃除します」
純子は言ったが、あまりにも乱雑でしばらく掃除機もかけていない部屋に招くのはさすがに気が引けた。休日だったが仕事だと言って半日がかりで掃除をしたのだった。
(好きな女を初めて呼んだみたいだ……)
布団も消臭剤をたっぷりかけて干した。時間がかかったのは風呂場だ。換気などしたことがないから壁のタイルはカビだらけ。わざわざカビ取りを買ってきて磨きあげた。
(こんなことってあるのか……)
何だかそわそわしている自分が可笑しかった。
不思議なときめきが俺の中に生れていた。
純子が部屋に入ってきた時のことである。マスクを外してきれいな歯を見せた。
(光りを感じた……)
目には見えない明るさを感覚したのである。
「あ、きれい。掃除したんですね」
「あんまりひどかったから、ちょっと」
「洗剤のにおいがする。……」
大きな目をきょろきょろさせて部屋を見回した。
「今日お仕事って嘘でしょう。全部きれいだもん」
俺は苦笑して、
「純子が来るからきれいにしときたくて……」
「あたしがしたかった。……でも、嬉しい」
感じる明るさは純子の存在が俺の中に在ったからなのか。その意識が投影されたものなのか……。
テーブルには豪華な会席弁当を用意しておいた。予約制の特注である。
「すごい。お料理屋さんみたい」
「なんか、弁当ばっかりだけど」
「コンビニとは全然ちがうわ。高いでしょう?」
「弁当は弁当だよ。美味くても味気ないんだよな。こんど、純子の手料理食べてみたいな」
「そんなこと言われたの初めて。自信ないけど、作ります」
照れたように笑う眼差しには純真な輝きがあった。
俺の提案ですぐに約束ができた。週末は俺の部屋で料理を作って過ごすこと。平日は俺が純子の部屋に時々行く。
「一人でいたい時だってあるだろうから……」
「はい……」
考えてみれば特に深い意味はなかった。強いて言うなら2人の取り決め、2人だけの秘密を持ちたかったのかもしれない。
スペアキーを渡し、
「俺が遅い時は入ってていいよ」
「誤解受ける人、いないんですか?」
「そんなのいないよ」
酔った勢いで行きずりの年増女を連れ込んだことはあるがもう長いこと特定の女はいない。
「なんか、どきどきしちゃう……ふふ……」
俺は何も言わず純子を見つめていた、
一緒に風呂に入ろうと誘ったのは俺だ。純子は俯きながら頷いた。
「髪洗うから先に入りますね」
持ってきたリュックには着替えのほかに、シャンプーやコンディショナー、ブラシに化粧水、ドライヤーまで入っていた。
「ドライヤーくらいあるよ」
「わからなかったから……。かさばっちゃった」
「いるものは買っておくよ。バイト代たいして貰ってないんだろ」
「ありがとう……」
素直な目が瞬きをした。
濡れた髪は色香を滲ませる。白い小さな肩を見せて純子が浴槽に沈んでいた。
「お先に……」
首をすくめて言った。湯の中に揺れる裸身が妖しく見える。股間が反応した。
「ふふ、大きくなってきた」
「純子のせいだ」
「あたしだって、さっきからずっと。上条さんのせい……」
「おいで」
俺が手を伸ばし、純子の手が触れた。
痩せた背中の感触は女性としか思えない。抱き寄せると屹立した股間もくっつき、交差する。
(ペニスと、クリ……)
シャンプーを手にとって『クリ』を包む。
「ああ……」
「洗ってあげる」
折れるように膝が崩れた純子を抱えると俺のペニスが握られた。
「洗ってあげるわ……」
濡れた髪が頬に流れ、愛欲の乱れが始まろうとしていた。