解放-4
それほどに夏美は目眩く快楽の海に溺れ、夢のような世界のなかで弄ばれていた。
夢は、まだつづいている。
肌は敏感なままで、身体の芯に取り憑いた疼きは、くすぶりつづけたままだ。
耐え難い疼きだった。
すぐにでもこの疼きを治めなければ、夕べのようにまた気が狂いかねない。
自分の指程度では鎮められそうになかった。
バイブを使おうと思った。
夫の身代わりにこっそりと購入したバイブは、タンスの引き出しの奥に眠っている。
ものすごい破壊力があった。
あのバイブで、気が触れるほどに転げ回りたかった。
夏美は起き上がろうとして振り返った。
そこのある顔を見て、思わず悲鳴を上げそうになった。
――タケルっ!
タケルが、夏美の背中で眠っていた。
どうしたわけか肩が剥き出しになっている。
厚い胸板を見せている。
服を着ていなかった。
タケルは生まれたままの姿で、子どものような無邪気な顔のまま、夏美の背中で深い眠りのなかにあった。
最初は驚きしかなかった。
次に襲ってきたのは、泣きたいほどの安心感だった。
――タケル!タケル!
夏美の瞳から、じわりと涙があふれ出た。
どうしてタケルが裸でここにいるかなど関係なかった。
そこにタケルが居てくれるだけで、しがみつきたくなるほどに嬉しくてならなかった。
子どもの頃から、この息子が好きだった。
大きくなると、素直でやさしくて頼りになるタケルがどうしようもなく好きで好きでたまらなくなった。
このベッドの上で、何度もタケルに犯される自分を想像しながら自慰に耽った。
バイブを自分で押し込みながら、狂ったように泣いた。
ひどい嫌悪感に陥ったりもしたけれど、やめることはできなかった。
タケルに犯される自分を想像しなかった日など、1日としてない。
それほどに愛していたタケルが、目の前にいる。
じっと、見つめた。
ひどく凛々しい顔をしたタケルだった。
純平などとは比べるべくもない。