衝撃-5
やはり、夕べのうちに母は帰ってきたのだ。
何時頃なのかはわからない。
日付が変わるまではミナを虐めるために起きていたから、それ以降ということになる。
明け方近くに帰ってきたのかもしれない。
着替えたミナが部屋から出てきた。
その姿を確かめて、タケルは寝室に入ると、母の眠るベッドへと近づいた。
「母さん……」
肩を揺すって起こしてみたが、母の目覚める様子はなかった。
ずいぶんと深い眠りにあるらしく、少し強めに身体を揺らしてみても、母のまぶたはピクリとも動かない。
ひどく疲れ切った顔をしていて、目の下にはクマのようなものまである。
やわらかな質感のある艶やかな髪の毛が、ボサボサに乱れきっていた。
「母さん、母さん」
何事があったのかと心配になり、何度も揺すって起こしてみたが、母はずっと眠ったままで目覚める様子はなかった。
身体を横にして背中を向けながら、まるで死んだように横たわっているだけだ。
――どうしたんだ?……。
不安はあったが、これ以上関わっている時間はなかった。
ミナを学校へ行かせなければならない。
仕方なしにベッドを離れると、タケルは寝室を出た。
「ママ、いるの?……」
ドアを閉めたところで、ミナが不安げな目を向けながら廊下に立っていた。
夕べは、裸のままタケルの部屋で寝てしまったものだから、母に気づかれたかもしれないと心配しているのだろう。