落書き犯の正体-1
月に一回市民会館で開催される美術部による絵画コンクール。そこには見慣れた部員たちは勿論、その親に友人と沢山の方が足を運んでいて。
そんな賑わいの席の中、一人ポツンと壁に背を寄せ暗い表情で床に視線を落とす一人の
少年が…。
「風馬君っ!」
「!…、稲葉さん。」
元気よく彼の元へ駆け寄り、それに対して沈んだ顔のまま首を上げる。
「準優勝、おめでとう!」
「ありがとう、…でも君の佳作賞も中々だよ。」
「私何てまだまだだよー。」
実に低いトーンで感謝と褒め言葉を口にする。
「あ、あのさっ!」
「うん、何?」
私は、彼の事が好きだ…、だから、この前の水族館だけじゃ物足りない。
「ディズ○ー、好き?」
「え…、うん、それなりに。」
顔が、熱い。
「だったらさぁー、今度一緒に映画観に行かない!?今、最新作が上映されていて、クラスでもちょっと話題何だけど…。」
「……。」
言葉を失い、考え込む。
「ゴメン…。」
「!!」
彼も、私と映画に行く事が何を意味するのか分かっているようで、君とは付き合いない
他に想い人が居るから…、そう聞こえて仕方がない。
私は不意に彼の想い人柊さんを思い浮かべるも、それを口にする事はなく。
それから何を言うでもなく私にスッと背を向け、この場を立ち去る。
「風馬…君。」
所詮は叶わぬ恋、なのだろうか…。