投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

恋のMEMORYの最初へ 恋のMEMORY 151 恋のMEMORY 153 恋のMEMORYの最後へ

兄の帰省-6

「へぇー、お兄さんが…。」
「えぇ、穏やかで感じの良い人でしたよ。」

下校道を歩きながら昨日の事を話す私。

「で?その人、一体何の用があってアイツの家に?」
「それがですね!聞いて下さいよぉーっ!」

嬉しいニュースな為、思わず顔をぱぁと輝かせ巴ちゃんの方を振り向く。

「一緒に、同居?」
「そうっ!どうやら今は青森に住んで働いているみたいで。」
「一緒に青森で暮らそうっと…。」
「彼、昴さんは経済力もあるし、何より弟の佐伯君を大事に思っている、兄弟で暮らせば
あの無責任な親父さんに振り回せれる事もないし、家でもちゃんとした食事もとれて。」
「そうねぇー、もう暗い家とはおさらば。」
「昴さん、どうやら同居してる彼女さんがいて。」
「ほうほう。」
「その人も佐伯君の事を聞いて、別に構わない、是非力になってあげたいって!」
「じゃー、お兄さんが父親でその女性が母親って感じね。」
「えぇ!これで彼は生活面でも精神面でも全く苦労しないっ!」
「……。」
「後は彼が素直にお兄さんの誘いを受ければ…、もう何も問題ない。」

それを思うと胸がとてもホッとする。私は片手でそっと胸に触れる。

「問題ないって…。」
「まぁ、彼は少々頑固だから…、お兄さんに甘えたくない所もあるけど、今回ばかりは私もビシッと言うわ。」
「本当に、それで良いの?」
「?だってこれで彼は救われ…。」
「バッカじゃないのっ!アンタ!」
「へ?」

突然罵声を浴びせる巴ちゃん、何?

「…それがどういう事なのか、本当に分かってるの?」
「どうって…。」
「はぁーー。」

悪意にも満ち溢れた深いため息。目をつぶり眉間にしわを寄せ、頭を抱える。

「青森に行くって事は転校しちゃうって事なんだよっ!?」
「!!っ。そ、そうでしたわね。」

大事な事を忘れていた、でも。

「だから、何ですの?」
「!!」
「まぁ、クラスの皆にはさよならしなければいけないし、何より巴ちゃん、そして一条君は寂しいでしょうけど。」
「……。」
「まっ、彼の事を思えばそれは。」
「ったくもぅーー、どうしてそこに自分が居ない訳よっ!?」

私が、居ない?

「やっぱり分かってないな。いい!?彼が青森に行くって事は彼はもうこの街にも学校にも居ないのよ!」
「……。」
「………つまり、つまりあたるとはもう会えないのよっ!もう、二度とっ!!」
「!!」

巴ちゃんに言われて、初めて気づいた。

彼と、会えない?

次回、23話に続く。


恋のMEMORYの最初へ 恋のMEMORY 151 恋のMEMORY 153 恋のMEMORYの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前