落書き犯の正体-4
私と巴ちゃんは放課後、学校付近の公園へゆったりとした足取りで向かった。
「はい、ココア。」
「あ、有難う御座います!」
近くの自販機で木の下のベンチに腰を下ろす私に優しく手渡す巴ちゃん。
「私、どーもココアやコーンポタージュばかりで、コーヒーが飲めなくて。」
「いいじゃん人気あるよ、ただちょっと子供っぽいけどね♪」
「巴ちゃーん!」
そんな彼女の手にはおしるこ…。
「佐伯君も、一条君もブラックでコーヒーを飲めるってのに。」
「まぁ、あの年頃はねぇー、一歩先大人になりたがる年頃なのよ…。」
達観してるなぁー。
小学生くらいの子達が無邪気に遊び回っている。
「……向こう、青森でもこういった公園はあるのでしょうか、いやありますね。」
「若葉。」
眉を顰め、今居る公園を青森と仮定しちゃう私。
「向こうに行ったら、佐伯君は…きっとううん!必ず幸せになれると思う。」
「…、向こうはまだ行くと決まった訳じゃ。」
「それは、そうですけど。」
「アイツと会って引き止めたら?その方が。」
「…なら、彼はずっとあのままで良い訳?」
「それは…。」
「彼は私の為に行くのをためらっている、けどそれだとお兄さんの誘いを断る事になる…
それじゃーまたいつあのお父さんやあの暗い自宅によって心を壊すか…。」
「…アイツの事を思って、あえて行かせる訳ね…。」
「当然だよっ!大好きな人の幸せを願うの何て当たり前じゃん!」
「アンタはさぁ、それで良いの?平気なの?」
「!……。」
急に言葉を失う。
平気?
彼が、居なくなって?
そんなの、そんなの…。
「!!」
胸が一気に締め付けられ、心が苦しくなる。
「私、私は…、彼が佐伯君がっ!」
「若葉、そうだよねっ!辛くない訳がない、苦しくない訳がないっ!」
「うっ、ひっく、私は、彼が幸せなら。」
「ゴメンねっ!若葉、御免ね!分かり切っていた事を!」
そう言って彼女は私を思いっきりぎゅーと抱きしめてくれた。
「ねぇ、巴ちゃん…。」
「?」
「私、どうしたら良い?」
「そ、それは…。」
涙が溢れ出て、止まらない。
流石の巴ちゃんも困惑して、目を大きく見開く。
彼と別れたくない、ずっと傍に居たい…、でも折角まともな生活を送れる、と言うのに。
…佐伯君には、幸せになって欲しい。
一体、どうしたら…。